洋書要約シリーズ記念すべき第一弾はこちら、Atomic Habits(アトミックハビット)。
日本語訳版の「ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣」と言われればピンとくるという人もいるのではないでしょうか。
出版は2018年ですが、自己啓発書のベストセラーとして現在でも売れ続けています。
- 新しいことを始めてもなかなか続かない
- 悪習慣とわかっていてもやめられない
自分は何て意思が弱いんだと自己嫌悪に陥ることはありませんか?
安心してください。それはあなたの意思が弱かったのではありません。あなたのやり方が間違っていただけです。
この本を読めば、きっとあなたも習慣にコントロールされる人生から、習慣をコントロールして理想の自分に近づく人生にシフトチェンジできるでしょう。
習慣の4大原則
なぜ小さな変化は大きな結果を生むのか
英語学習、筋トレ・ダイエット、楽器の演奏など、継続的な努力や技術を要するアクティビティには次のような共通点があります。
- 最初のうちは変化を感じる事ができない
- ある地点を境に急に変化する
例えば、
- リスニングを毎日続けていると、急に英語がクリアに聞こえるようになる
- 筋トレを数ヶ月続けていると、如実に身体が変化し始める
- 難しいギターのフレーズを毎日練習していて、急にコツを掴んで弾けるようになる
といったブレークスルーが起きるのは、習慣の積み重ねは株式投資の複利の原理と似ているからです。
まさに、習慣の積み重ねとは自己投資なのです。
望む結果を得たいと思っているのであれば、1日1%成長する事を意識して、それを毎日継続する事です。
最初のうちはほとんど変化が見られません。
しかし、複利の原理が働いているので、毎日コツコツと1%の成長を続けていれば、雪だるま式に成長の塊が増大し、1年後には約38倍成長している計算になります。
今日の時点を1とすると、1×1.01=1.01になります。
すると、明日は1.01から1%成長するので、昨日の1%よりも成長度が若干上がっています。
1.01×1.01 = 1.021
1.021×1.01 = 1.030301
1.030301×1.01 = 1.04060401
1.01365 = 37.78
このように、最初の数ヶ月は誤差の範囲を出ませんが、半年後あるいは1年後には変化が顕著になっていきます。
しかし、たとえ毎日1%ずつ成長したとしても、最初は目に見える変化を感じることができないので、本当に正しい努力なのかと不安になったり、つまらなくなったりして、やめてしまおうかと思い始めます。
こちらの表は期待される成長線と実際の成長線のギャップを表したものです。
このように、最初のうちはポテンシャルの潜伏期間があるので忍耐が必要ですが、腐らずに継続していれば、いつか臨界点に達して、ブレークスルーが起こり、そこからの成長は加速度的に伸びていきます。
私たちの成長は1本の木に例えられます。
木を植えるにはまず種を蒔いて、水をやり続ける必要があります。
最初のうちは見た目に何の変化もありません。
しかし、一度芽が出ると、そこからはぐんぐんと天に向かって伸びていきます。
悪い変化も同様に、最初の数回であれば悪影響が出ませんが、長期的に継続していると、いつのまにか負のループを抜け出せない状態になってしまいます。
例えば、
- 読書をしようと思ったが、このショート動画を見終わってからと繰り返しているうちに1時間が経過していた
- ジムに行こうと思ったが、雨が降っている、外は寒いなど言い訳をしてサボっているうちに段々行かなくなる
- ボディメイクのため自炊に挑戦していたが、段々面倒になり、結局はウーバー生活に逆戻り
習慣は、良い行動を選択し続ければ大きな結果につながりますが、望まない行動を選択し続けてしまうと、とことん落ちてしまうという諸刃の剣のような強力な性質を持っています。
我々は日々を生きていく中で、常にどちらの1%を選択するかということを試されています。
多くの人はどうしても甘い誘惑に抗えず、楽な方や今までの悪習慣の方に押しやられてしまうでしょう。
そして、
自分はなんて意思が弱いんだ…
と自己嫌悪に陥ってしまうでしょう。
でも、安心してください。習慣に意思の力は必要ありません。
意識すべきは、私たちが今経験している結果(能力・見た目・収入など)はすべて、数ある小さな習慣の集合体で成り立っているということです。
ここにこの本のタイトルが集約されています。まさにAtomic(原子・最小単位)Habitsです。
私たちの肉体は無数の原子から構成されています。
それと同じく、私たちの精神・アイデンティティ・能力も小さな習慣から形成された塊です。
別の言い方をすると、習慣というのは大きなシステムの一部です。
目標を立てることは大事ですが、一度目標を定めたら、あとはどうすれば今日1%成長できるかということに集中し、それを達成するためのシステム(環境)作りに注力すべきです。
では、我々が日々迫られる1%の選択を誤らないようにするには、どうすれば良いのでしょうか?
次の章で詳しく解説していきます。
- 毎日1%成長する
- 習慣は諸刃の剣
- 最初のうちは変化を感じることができない
- 小さな習慣は大きなシステムの一部
- 目標は設定せず、仕組み作りに注力する
習慣を正しく理解する
なぜ悪習慣を断ち切り、良い習慣を継続するのが難しいのでしょうか?
これには主に2つの理由があります。
- 変えようとしているものが間違っている
- 間違った方法で変えようとしている
私たちは何かを変えようと思った時、闇雲に行動だけを変える努力をしてしまいがちですが、それだとほとんどの場合うまくいきません。
まずは習慣とは何かを理解する必要があります。
人が変わる時、変化のレベルは次の3層に分けられます。
- Outcome Change:望む結果に対する変化
- 体重を落としたい、本を出版したい、大会で優勝したいなど
- 目標設定はこのレベルで行われる
- Process Change:行動やプロセスの変化
- ジムで新しいトレーニングメニューを追加する、仕事の生産性を上げるために机を整理整頓するなど
- 習慣化はこのレベルで行われる
- Identity Change:セルフイメージの変化
- 自分はどういう人間か、どのように世界を見ているか、どのように自分自身と他人を判断しているかなど
- 根本的な観念の変化はこのレベルで起こる
それぞれの変化のレベルはすべて重要であり、どのレベルを重視するべきということではありません。
問題はその順序です。
ほとんどの人は、こうしたい、これが欲しい、という目先の結果(Outcome)から行動(Process)を変えようとし、もしこのまま続けていればいつかこうなれるだろう(Identity)という希望を抱きます。
しかし本来は、私は何になる、こういう人間になる、という理想の自分(Identity)になることを決めてから行動(Process)を変え、結果的に目先の目標(Outcome)を達成するというのがが正しい流れです。
すなわち、行動を変えるということはアイデンティティを変えるということです。
例えば、
- 本を読むのが目標ではなく、読書家になるのが目標
- マラソンをするのが目標ではなく、ランナーになるのが目標
- 楽器を演奏するのが目標ではなく、ミュージシャンになるのが目標
というように、まずは何になりたいかを定める必要があります。
そうすれば、おのずと行動が変化し、気づいた頃には求めた結果を手に入れているという状況になります。
さらに、行動とアイデンティティには相互関係があり、行動を変えて習慣にすると、アイデンティティも変わります。
いったんこの正のループが発生すれば、あとは一直線に理想の自分に向かっていきます。
逆に、あなたのアイデンティティに変化がなければ、いくら行動を変えようとしても、古いセルフイメージに引き戻されるので、何かと理由をつけて正当化し、元の自分に戻されます。
これが、悪い習慣を断ち切るのが難しく、良い習慣を続けるのが難しい理由です。
- どのような人間になりたいか決める
- 小さな成功体験を積み重ねて自分自身に証明する
習慣化のための4ステップ
まず、習慣とはこのように定義します。
- 習慣とは、ある行動を十分な回数繰り返し行うことで自動化すること
- 習慣の最大の目的は、ある問題を最小限の労力とエネルギーで解決すること
ある行動が習慣化されていない段階では、その行動を起こすたびに、選択と判断を迫られ、脳の神経回路が活発に動いている状態です。
全ての工程を意識的に行う必要があるため、ワーキングメモリを消費し、労力とエネルギーを必要とします。
しかし、同じ行動を一定回数繰り返していると、意識的な判断を必要としなくなり、やがて全ての工程を全自動で行うことが可能になります。
では、どのように行動のループが発生し、習慣となるのでしょうか?
習慣は次の4つのステップを経て繰り返されます。
- Cue(きっかけ・動機)
- Craving(欲求)
- Response(反応)
- Reward(報酬)
この4ステップは全ての習慣の根幹であり、例外はありません。
Cue
Cueは、最終目標であるReward(報酬)のヒントとなる情報です。
また、Cravingを起こすトリガーとなるものでもあります。
我々の意識は常に周りの環境から情報を収集し、報酬につながるものはないかと分析しています。
これは太古の昔から我々人類に備わる生存本能で、過去の経験から求めているもの(食物・水・性交渉など)が得られる場所のヒントとなるサインを察知する能力です。
これらは極めて直接的な欲求ですが、現代における間接的な欲求(金・名声・権力・交友関係など)にも適用されます。
なぜなら、Rewardは物理的な対象物ではなく、そこから得られる状態や感覚だからです。
Craving
Cravingは、Cueを察知して、実際に感情が動くフェーズです。
あくまでも感情なので、実際の行動そのものを欲しているわけではなく、そこから得られる感情や感覚を欲しているということです。
例えば、
- タバコを吸いたくなるのは、タバコを吸う行為をしたいのではなく、一服してホッとする感覚を欲しているため
- 歯を毎日磨くのは、その行為自体がしたいのではなく、磨いた後の口の中がさっぱりした感覚を欲しているため
- テレビをつけるのは、テレビ自体ではなく、そこから得られる楽しみを欲しているため
というように、Cravingは人それぞれ違い、Cueの存在自体に意味はありません。
CueはCravingに紐づくことによって初めて意味を持ちます。
Response
Responseは、Cravingが原動力となって、実際に行動(または思考)に移すフェーズです。
実際に行動するかどうかは、Cravingの大きさによりますが、次の条件を満たさなければResponseに移行しません。
- そのRewardを得るために費やす労力やエネルギーが自身の許容範囲内である
- そのRewardを得るための能力が自身に備わっている
Reward
Rewardは、あらゆる習慣の終着点です。
また、
- CueはRewardを察知すること
- CravingはRewardを欲すること
- ResponseはRewardを獲得すること
というように、他の3つのフェーズの出発点でもあります。
あなたはそのRewardで欲求を満たすと同時に、どのようにして獲得できたかということを成功体験から学習し、Cueとしてあなたの脳に保存されます。
そして、今後似たような条件下に置かれると、そのCueがトリガーとなって、Cravinng → Response → Rewardという一連の流れが再現されます。
おやつの装を破る音が聞こえただけでよだれが出てくるブヒ……
完全にCueになってるね!
人間の脳は常にどの行動(Response)が報酬(Reward)に繋がったかモニタリングをしながら、サイン(Cue)を見つけたらどのように行動すれば成功するのかを記憶しているので、次に行動に移すときは前回よりも少ない労力とエネルギーで実行することが可能です。
このようにして習慣のループがどんどん加速していきます。
一度ハマると抜けられそうにない習慣のループですが、実は脆弱性があります。
この4つのフィーズのどれか1つでも不十分な状態に陥ると、ループが解消されるということです。
- Cueが取り除かれると、アクションが起こらない
- Cravingを小さくすれば、行動を起こすモチベーションが上がらない
- 行動自体(Response)を難しくすれば、アクションを実行できない
- Rewardで満足できないと知れば、それ以上アクションを起こそうと思わない
この法則を知っていると、
- 悪い習慣を断ち切りたいときは、意図的にどれか一つのフェーズを機能不全にする
- 良い習慣を継続したいときは、それぞれのフェーズを強化する、または維持するように努める
というように、対処方法を明確にすることができます。
では、どのように習慣をコントロールすればいいのでしょうか?
本書では具体的な方法を次の4つの法則に基づいて提唱しています。
良い習慣を継続するには | |
---|---|
第一の法則(Cue) | Make it obvious(明確にする) |
第二の法則(Craving) | Make it attractive(魅力的にする) |
第三の法則(Response) | Make it easy(簡略化する) |
第四の法則(Reward) | Make it satisfying(楽しみにする) |
悪い習慣を断つには | |
---|---|
第一の法則の反対(Cue) | Make it invisible(見えなくする) |
第二の法則の反対(Craving) | Make it unattractive(魅力をなくす) |
第三の法則の反対(Response) | Make it difficult(難しくする) |
第四の法則の反対(Reward) | Make it unsatisfying(満足させなくする) |
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習慣を制する第一の法則:明確にする
習慣をコントロールするためには、まず、自分がどのような状況で、どのような習慣を行なっているのかを明確にする必要があります。
方法は3つあります。
- 無意識で行っている習慣を顕在化する(Habits Scoreboard)
- 習慣と条件を紐付ける(Habit Stacking)
- 環境を整える
詳しく解説していきます。
無意識で行っている習慣を顕在化する(Habits Scoreboard)
まず初めに、現在行なっているすべての習慣を洗い出し、次の3つのカテゴリーに分類します。
- 良い習慣
- 悪い習慣
- ニュートラルな習慣(生活する上で必要不可欠な習慣)
例えば、下記のように分類します。
- 良い習慣(+)
- 体重を測る
- 入浴する
- フロスをする
- 緑茶を飲む
- 悪い習慣(ー)
- スマホをいじる
- スナック菓子を食べる
- タバコを吸う
- 酒を飲む
- ニュートラルな習慣(=)
- アラームを設定して起床する
- トイレに行く
- 洗濯をする
- 着替える
習慣の良し悪しは人によるので、実際には「良い習慣」や「悪い習慣」というものはありません。
ここでいう、良い・悪いというのは、厳密にいうと効果的かそうでないかという基準です。
目指している人物になるために、プラスになるかマイナスになるかってことブヒな
うん、例えば同じお酒でもソムリエを目指している人には、ワインを飲んで勉強することはプラスになる習慣だからね
現在行っているすべての悪い習慣を急に止めるのは現実的ではないと思いますが、このようにして良い習慣と悪い習慣を改めて認識することによって、自分の行動を客観視することができ、今後の行動指針の手助けになります。
習慣と条件を紐付ける(Habit Stacking)
新しい習慣を身につける際に、まずはその行動のトリガーとなる条件を決めてしまいます。
私は[X]という状況で[Y]という行動を起こします
という式に当てはめられれば、どのような条件でも構いませんが、時間と場所に紐付けるか、今行っている習慣と連動させるのがおすすめです。
- 時間と場所に紐付ける → 私は[いつ(When)]に[どこ(Where)]で[なに(What)]を行います
- 今行っている習慣と連動させる → 私は[A(現在の習慣)]のあとに[B(新しい習慣)]を行います
例えば、
- 私は[朝6時]に[リビングルーム]で[10分間の瞑想]を行います
- 私は[夕方6時]に[カフェ]で[英語の勉強]を行います
または、
- 私は[洗顔をした]あとに[10分間の瞑想]を行います
- 私は[コーヒーを一杯飲んだ]あとに[英語の勉強]を行います
というような感じで、Cueを意識的に設定し、それを一定回数行うことで、意識しなくても、その状況に置かれた時に自動的に習慣が発動するようになります。
環境を整える
人が何か行動を起こそうと思う時、その何かをしようというモチベーションが行動のすべてを決めていると思われがちですが、実は必ずしもそうではありません。
我々がこれから起こす行動を選択する時、対象が「なに(what)」があるかではなく、「どこ(where)」にあるかで結果が左右されます。
そこに何があるかはあまり重要ではなく、そこにあるから行動に移すということです。
例えば、
- 読書をしたいと思っていたのに、目の前にスマホがあったのでSNSをだらだら見続けてしまった
- 平日は禁酒すると決めたのに、冷蔵庫を開けたらビールがあったので飲んでしまった
というように、どうしても目に映ったものに意識が引っ張られるという性質があります。
なので、良い習慣を行いたい場合は、その対象物を常に目の前に置いておき、逆に悪い習慣をなくしたい場合は目の前から消し去れば良いということです。
上記の例であれば、
- 読書をすると決めたら、机の上に本を置いておき、スマホは引き出しの中にしまう
- 平日は禁酒すると決めたら、ビールの買い置きはせず、その都度購入する
というように、環境をコントロールする方が、モチベーションを維持するよりはるかに簡単です。
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習慣を制する第二の法則:魅力的にする
自分の習慣を客観的に把握したら、今度は良い習慣を続けるために、習慣自体を魅力的にするのが効果的です。
方法は3つあります。
- ドーパミンを理解する
- 習慣とご褒美を紐付ける(Temptation Bundling)
- 他者と関わる
詳しく解説していきます。
すべての行動の源ドーパミン
習慣を理解する上で欠かすことができないのが、脳の報酬系回路に関与しているドーパミンという神経伝達物質です。
我々の脳は、何千年という長い狩猟採集生活の中で生き延びるために、塩分、糖分、脂肪分などハイカロリーな食物、すなわち強い刺激に高い価値を置くように作られてきました。
現代の世界では、彼らのようにサバンナで生き延びる必要はありませんが、この機能は今でも踏襲されており、我々の脳は常に高刺激なものを求めるようにできています。
ドラッグ、ジャンクフード、テレビゲーム、SNSなど、依存性の高いものはすべて、高レベルのドーパミンと結びついています。
そして、これらのような中毒性の高いものだけではなく、食べ物を食べる、水を飲む、人と関わるなど、生きる上での基本的な行動にもドーパミンは関与しています。
何年もの間、ドーパミンは欲求を満たすだけのものと考えられてきました。
しかし近年では、モチベーション、学習と記憶、自発的な行動など、神経伝達のプロセスにおいて中心的な役割を担っていることが判明してきました。
ドーパミンは何かしらの欲求が満たされた時に放出されますが、その欲求が満たされることを予見するだけでもこのドーパミンスパイクが起こることが解っています。
むしろ、一度習慣のループが形成されると、実際に行動を起こす直前でドーパミンレベルがピークに達し、その後順調にRewardを獲得した時にはドーパミンスパイクは起こりません。
クリスマスはプレゼントを開ける時よりも、期待に胸膨らませて起きた朝が一番ワクワクしてるブヒな!
そうだね、旅行も計画している時が一番ワクワクしてるもんね
私たちの脳は、やりたいこと(liking)よりも、欲していること(wanting)を優先するようにできています。
なので、高刺激な習慣に依存するほど、その他の低刺激で地味な習慣を続けることが困難になります。
習慣の第二の法則(Make it attractive)を実践する上で、ドーパミンを起因とした脳の報酬システムを理解し、活用してくことが鍵となります。
習慣とご褒美を紐付ける(Temptation Bundling)
あなたが日々の生活を送る中で、
- ニュースをチェックする
- SNSをチェックする
- NetflixやYoutubeなどの動画コンテンツを見る
- スマホでゲームをする
- お菓子を食べる
など、意思の力を全く必要とせず、何の苦労もなく、ただ単純にやりたいからやっているだけ、という習慣が1つくらいはあると思います。
そこで、これらの習慣にこれから取り組む習慣を紐づけることで、導入時の心理的障壁を小さくしようというのが狙いです。
私は[新しい習慣]を行なった後に[楽しみにしている習慣]をします
というように、このタスクが完了すればこれをやっても良い、と自分の中でルールを決めます。
さらに、第一の法則で説明したHabit Stackingと組み合わると、さらに強固なフォーメーションになります。
私は[すでに行なっている習慣]を行なった後、[新しい習慣]を行い、[楽しみにしている習慣]をします
例えば、
- 私は[洗顔をした]あとに[10分間の瞑想]を行い、[SNSをチェック]します
- 私は[コーヒーを一杯飲んだ]あとに[英語の勉強]を行い、[スマホでゲーム]をします
のような感じです。
また、純粋に楽しみにしている習慣というのは、単体で行うと罪悪感を感じやすいものが多いのですが、
これさえ終われば、あれをやって良いんだな
と、心置きなく好きな習慣を楽しむことができ、双方でストレスを感じずに続けることができるというメリットがあります。
他者と関わる
元来、人間は群れで生きる社会的な生き物なので、
- 他者に認められたい
- 他者からよく思われたい
- 他者といい関係を築きたい
という欲求が本能的に備わっています。
狩猟採集を行っていた時代の人たちにとって、群れから仲間外れにされるということは死に直結していたからです。
この本能を意図的に利用し、他者との関わりを通じて、習慣をより魅力的にしようというのが狙いです。
まず、対象とする社会的グループは3つあります。
- The close(近しいグループ)
- The many(大人数のグループ)
- The powerful(影響力のあるグループ)
それぞれ解説していきます。
1. The close:近しい人を模範とする
前章で環境を整えることが重要と説明しましたが、物理的な環境だけではなく、社会的な環境も我々の行動に大きな影響を与えます。
我々は周りの人々の行動を見て、自分の起こす行動を決めています。
両親、友人、配偶者、とその時最も近くで過ごしている人がとっている行動を、知らず知らずに行っていることに気付きます。
行動のみならず、話し方、態度、考え方など、その対象となる人物との距離が近ければ近いほど、その人に寄せていく傾向があります。
すなわち、一緒に過ごす人というのは、自分が所属している文化ということになります。
そして、良い習慣を形成するには、その習慣が当たり前に行われている文化に所属することが最も効果的です。
今の自分にとっては挑戦となる習慣でも、周りの人が当たり前のように行っていれば、
そんなに大したことじゃないんだな、自分でもできそうな気がしてきたぞ
というように、自分の当たり前レベルを底上げしてくれます。
例えば、
- ジムで身体が引き締まっている人に囲まれていれば、自然とトレーニングを毎日するようになり、食事にも気を使うようになる
- 読書クラブに所属すれば、当たり前のように毎日読書し、呼吸をするかのように活字を追うことができるようになる
というように、自然と周りに引っ張られていきます。
そして、あなたのアイデンティティも、
- ジムにいる私たちはトレーニー = 私はトレーニー
- 読書クラブにいる私たちは読書家 = 私は読書家
と、抵抗なくシフトチェンジできます。
そして、一度アイデンティティが確立すると、もはやそのように振る舞わずにはいられなくなるのです。
しかし、いくら良い影響があるからといって、今の自分からあまりにもかけ離れたグループだと、そもそも入っていけなかったり、入ったけどなかなか馴染めなかったりと、現実問題として無理が生じる場合があります。
そんな時は、何かひとつでも今の自分と共通点があるグループに所属するとうまくいく確率が上がります。
例えば、アニメやゲームが好きであれば、オタクジムに行ってみるとか、コスプレイヤーを目指して仲間と一緒にボディメイクをする、とかでもいいと思うよ!
犬も人もPack(群れ)は大事ブヒな!
- 望んでいる習慣をすでに当たり前のようにやっているグループ
- 何かしら今の自分と共通点があるグループ
2. The many:大多数に迎合する
人間の生存本能として、より強い群れ、すなわちより大きな群れに所属しようとする傾向があります。
群れにおいて数は力であり正義です。
何かの問題に対して、例えあなたがAという明確な答えを持っていたとしても、周りの大多数の人たちがBといえば、最終的には自分もBが正しいのではないかと思ってきます。
確証がある答えでもこのように揺らいでしまうのですから、不確定な問題については、とりあえず大勢に従っておけば間違いないと、思考停止状態になるのは自然なことです。
そこには、仲間として認められたい、仲間外れにされたくない、という意識が作用します。
Amazonのレビューや口コミサイトも同じことブヒな!
うん、多くの人は商品そのものの価値より、どれくらい売れているかや評価の高さで判断するからね
人間の意識は本能的にその他大多数に受け入れられたいと思っています。
この本能を利用して、半ば強制的に望む習慣をやらざるを得ない状況を作り出します。
周りのみんながやっているのに、自分だけやっていなかったら居心地が悪くなります。
なので、多少モチベーションが下がっていたり、面倒だと思っていても、周りに溶け込まない不快感よりはマシだと感じ、渋々でもやるようになります。
そして、渋々でも継続しているうちに、徐々に心理的障壁が低くなっていき、いつのまにかやることが当たり前になって習慣化されます。
しかし、数が多ければ多いほど、影響力が強く、自身の判断能力を無効化されてしまうので、所属するグループ選びには注意が必要です。
所属するグループは、自分の理想とするセルフイメージに近い人たちが集まるグループを選ぶ必要があります。
そうすれば、たとえ思考停止状態に陥ったとしても、正しい道へとあなたを導いてくれるでしょう。
逆に、悪影響があるグループからは即座に離脱しましょう。
気づいた頃には、自身のコントロールが効かないところまで落ちてしまう危険性があります。
基本的な判断基準として、
- 変えようと思っている習慣が、そのグループの意に反しているのであれば、その変化は自分にとって魅力的にならない
- 変えようと思っている習慣が、そのグループに受け入れられることであれば、その変化は自分にとって魅力的になる
ということを覚えておけば、間違ったグループを選択せずに済むでしょう。
3. The powerful:成功者の真似をする
もうひとつ人間の習性として、権力者、ステータスの高い人、インフルエンサーなど、影響力のある人や成功者に憧れるというものがあります。
成功したいと願った時、多くの人はすでに成功している人の行動を真似しようとします。
我々の行動は、意識的・無意識的に関わらず、自分の中にあるロールモデルをイメージして選択されています。
なぜかというと、すでに成功している人の行動は、結果を出して世間に認められたことであり、その行動を模倣することによって、自分も世間に認められるような行動をしているという自己承認欲求を満たすことができるからです。
逆にいうと、こうはなりたくないという逆ロールモデルがあれば、その人がとっている行動はなんとしてでも避けようというモチベーションにつながります。
人間は多かれ少なかれ、他人にどう思われるか、どう映っているかというのを気にするという性質を持っています。
このように、世間に認められるということは人間の根本的な欲求であり、この本能をうまく利用すれば、習慣をより魅力的なものにすることができます。
人生はリアルなロールプレイングゲームです。
常にステータスを上げる行動を選択し、ステータスを下げる行動を避けるようにしていれば、立ちはだかる大きな敵も難なくクリアできるでしょう。
悪習慣を正す方法
習慣の原因を探る
あなたが日頃無意識に行っている習慣はなんでしょうか?
- 一息つきたい時にタバコを一服
- 毎朝ヤフーニュースをチェックする
- 目的なくSNSを閲覧する
- 暇さえあればスマホでゲームをする
- マッチングアプリで無限にスワイプしてしまう
など、多くに人は思い当たる節があるかと思います。
では、そもそもなぜこれらの行動をせずにはいられないのでしょうか?
そう聞かれると、あなたはこう答えるかもしれません。
理由?特にありません、ただ単純にしたいからです
本当にそうでしょうか?
実際には、すべての習慣には根本的な動機があなたの意識の奥深くに存在し、それが習慣という形で表面に現れているのです。
例えば、
- エネルギーを温存したい
- 食料と水分を補給したい
- 最愛の人を見つけて家族を作りたい
- 他の人と繋がっていたい
- 社会的に認められたい
- ストレスを解消したい
- 不確実なものを減らしたい
- ステータスと威信を手に入れたい
のような、すべての行動に対する欲求の根幹となるものです。
実際の例を挙げると、次のような形です。
- ストレスを解消したい= 一息つきたい時にタバコを一服
- 不確実なものを減らしたい = 毎朝ヤフーニュースをチェックする
- 他の人と繋がっていたい = 目的なくSNSを閲覧する
- ステータスと威信を手に入れたい = 暇さえあればスマホでゲームをする
- 最愛の人を見つけて家族を作りたい = マッチングアプリで無限にスワイプしてしまう
このように、あなたはこれらの行動自体をしたいのではなく、その奥に潜んでいる欲求をその行動を通して満たそうとしてるだけなのです。
意味を持たないただの行動でしかないものが習慣となるのは、あなたの潜在的な欲求と結びつき、これをすればこの欲求が満たされるということを学習してCueと認識するからです。
実際には欲求が満たされなくても、それをすることによって、欲している未来を予測できるだけでも、欲求が満たされた時と同じ状態になります。
そして、それを繰り返すことによって、どんどん依存性が増していき、Cravingが強化されていきます。
なので、やめたいと思っている習慣がある場合は、その習慣に対する感情を書き換えて、その習慣はあなたの助けにはならないと脳に覚えさせる必要があります。
習慣に対する感情を書き換える
人間が行動を起こすのは、不足の状態から充足の状態に変化したいと思った時です。
選択される行動自体はそれほど重要ではなく、そこから得られるであろう結果が重要なのです。
なので、改めたいと思っている習慣があるのであれば、その習慣に対する根本的な欲求を明確にして、それを満たす新しい習慣にシフトすれば良いだけです。
まず、悪い習慣に対する感情を書き換えるために、その習慣を行うことで生じるネガティブな感情やデメリットなどを書き出します。
そして、それを踏まえた上で、お金、時間、エネルギーなど貴重なリソースを消費してでも、この習慣を続ける価値が本当にあるのかと自分に問い続けます。
そうすると、
こんなにマイナスしかないと知っているのに、それでも続ける自分って一体…?
と、この習慣を続けることが馬鹿らしくなり、だんだん違和感や拒絶感を感じてきます。
また、一つの習慣をやめることによって、時間的・経済的な余裕が生まれるので、新しい習慣にもチャレンジしやすくなります。
一方、継続が難しい良い習慣に対しては、ポジティブな項目を書き出して、この習慣を行う意義を再確認します。
- きつい
- めんどくさい
- お金がもったいない
というようなネガティブな感情をポジティブな感情と入れ替えます。
そうすることによって、自分の中にある抵抗や、やらない理由を探す癖を直します。
また、その取り組もうとしている習慣を「やらなければならない(have to)」ではなく「することができる(get to)」というマインドにシフトすることも大切です。
例えばこのような感じです。
今日もジョギングしなきゃな…
ではなく、
さあ、今日も持久力とスピードを向上させるか!
というように、昨日の自分よりも少し成長できる機会を得たと思えば、その習慣を行えることに感謝し、また、自分はそれができるレベルまで来たんだな、と自尊心を満たすことにもつながります。
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習慣を制する第三の法則:簡略化する
良い習慣を続けるには、その行動を起こすことに対する心理的障壁をできるだけ低くする必要があります。
ポイントは7つあります。
- MotionとAction
- 時間ではなく回数×頻度
- 労力を最小限に抑える
- 決定的瞬間(Decisive moments)
- 2分ルール
- コミットメントデバイス
- ワンタイムアクション
詳しく解説していきます。
MotionとAction
自分を変えたいと思ったり、何か目標を達成したいと思った時、まずは実現するにはどうすればいいかリサーチするかと思いますが、多くの人は最適で完璧な方法を求めてしまいます。
例えば、
- ダイエットであれば、最速で体重を落とす方法
- 筋トレであれば、筋肥大を最大化するトレーニングメニュー
- 副業であれば、絶対に儲かる完璧な方法
などです。
確かに理論上は効果を最大化できる方法なのでしょうが、今のあなたにとってはあまりにも非現実的であり、実際に行動に移すというところまでいきません。
この理想と現実の間に生じるギャップを防ぐには、MotionとActionの違いを理解する必要があります。
どちらも「動き」に関する単語で、一見同じ意味の言葉にも思えますが、実際には大きな違いがあります。
Motionというのは、何かしようと思い立って、必要な情報をリサーチし、目標や計画を立てるところまでです。
Actionというのは、何かしらの結果につながる行動を起こすことです。
どちらも、「動き出す」というニュアンスがありますが、Motionが感情や思考などのメンタルの動き出しなのに対し、Actionは実際に体を使って実行するフィジカルな動き出しと言えるでしょう。
ダイエットを例に挙げると、トレーニング方法や食事について学ぶために何冊か本を買って読むというのはMotion、実際にヘルシーな食事にするのがActionということになります。
Motion(準備・下調べ・最適な方法の設計)は大事ですが、何冊本を読もうが、いくら専門家に話を聞こうが、Motionだけ行っている時点では得られる結果はゼロです。
Motionは何も結果を生み出さないブヒな!
うん、ある程度知識を得たらあとは実行あるのみだね!
何かを始めようと思ったとき、入念なリサーチは確かに必要ですし、必要だから行うのですが、それ以上に我々が下調べばかりを延々と繰り返して実際に実行に移さないのは、Motionを行うことで失敗のリスクなしで前進しているという感覚を得られるからです。
我々は皆、生まれながらにして、失敗と批判を避ける名人です。
Motionを繰り返していれば、他者からのジャッジにさらされることなく満足感が得られるため、その沼から抜けられずに、「自分は進歩しているんだ」と自分を正当化し続けます。
しかし、それは前進しているのではなく、経験すべき失敗を先延ばしにしているだけに過ぎません。
もしあなたが本気で何かを変えたいと思っているのにも関わらず、なかなか始められないという場合、完璧に行うための準備がただの先延ばしの口実であることを自覚し、とにかく実際の行動に移す、そしてそれをひたすら繰り返すということを心がけましょう。
時間ではなく回数×頻度
習慣化について最も聞かれる質問のひとつに、
何日続ければ習慣化できますか?
というものがあります。
しかしながら、その習慣に費やした日数(時間)というのはあまり重要ではありません。
習慣化を決めるのは、その習慣を何回繰り返したかという回数です。
極端な例ですが、同じ30日でも、その間に2回行ったのと200回行ったのでは、結果がまるで違います。
しかし、同じ回数行えば同じ結果が得られるかというと、そうでもありません。
同じ200回でも、30日間で行ったのと、300日間で行ったのでは、これもまた結果が違ってきます。
回数が一番重要ですが、そこに頻度という要素を掛けたものが、習慣化(自動化)するまでの速さとなります。
とくに始めたばかりであればあるほど、頻度が重要になってきます。
質より量ってことブヒな!
うん、最初はとにかく数をこなそう!
一度習慣化してしまえば、そのあとは頻度が落ちても省エネモードをキープできます。
自動車の運転などがわかりやすい例です。
最初の頃は、すべての項目をチェックし、全身に神経を張り巡らせて、常に緊張しながら運転しますが、一度習慣化(自動化)してしまえば、会話しながらや考え事をしながらでも、ある程度自動操縦モードでの運転が可能です。
運転する頻度が高ければ高いほど、自動化までのスピードは速くなります。
免許取り立ての頃、いろんな人に、
最初のうちはちょっとの距離でも毎日運転した方がいいよ
と勧められるのはこのためです。
そして、その後ある程度運転しない期間があっても、また一から思い出す必要はなく、以前のように運転することができます。
まずは集中期間を設けて一気に習慣を自動化させましょう。
労力を最小限に抑える
人間がこの世界で物理的な肉体を持っている以上、いかなる身体活動においてもエネルギーが欠かせません。
特に多くのエネルギーを消費するのが脳です。
我々の脳はできる限りエネルギーをセーブしたいので、目の前に複数のタスクがある場合、よりエネルギー消費が少ないタスクを選択しようとします。
例えば、他にやるべき事があるのにも関わらず、
- スマホを延々とスクロールしてしまう
- メールをチェックしてしまう
- テレビをダラダラ見てしまう
ということが起こるのは、これらの行動が非常に低負荷でモチベーションを必要とせず、ほぼ労力ゼロで行えるからです。
ある意味、習慣と言われるもののすべては、あなたが本当に求めている結果を得るための障害であるとも言えます。
例えば、
- ダイエットは痩せるための障害
- 瞑想は心を落ち着かせるための障害
- ジャーナルは思考をクリアにするための障害
というように、あなたはこれらの習慣から得られる結果が欲しいのであって、その行動自体をしたいからしているというわけではありません。
障害 = 負荷という解釈もできるね
その習慣を行うことに対する負荷が高ければ高いほど、習慣化の難易度が上がります。
なので、いかにその習慣を簡単なものにして、たとえ気が乗らない時でもやるようになるか、というのが重要です。
では具体的にどのようにして抵抗を減らせば良いのかというところですが、やはりここでも環境の力に頼ることの重要性を唱えています。
有効な手段のひとつに、現在の生活の動線上に新しい習慣を組み込むというものがあります。
例えば、これからジムに通って身体を鍛えようと思った時、職場と自宅の間の通勤ルート上にジムがあれば、わざわざ違うエリアのジムに行くよりも、抵抗がかなり抑えられ、習慣化の成功率が上がります。
この場合、完全にいつもの通勤ルートと同じエリアにあるというのが肝で、たとえ1ブロック離れてるところでも、もうそこは通勤ルート圏外となるので、あなたの意識の中では「わざわざ行うこと」と判定されていしまいます。
また、身の回りにある邪魔なものや気を散らすものをできる限り排除する、というのも有効です。
例えば、
- ダイエット中、友人と外食に行って食べるものを制限するよりも、最初から誘いを断る方が簡単
- 集中したい時、スマホの通知を気にしないように心がけるよりも、スマホを見えないところに移動させる方が簡単
というような具合に、自身の忍耐力で勝負するよりも、潔くその抵抗の元から排除した方が賢明です。
さらに有効な手段として、未来に行う習慣のために、あらかじめ環境をセットしておくという方法があります。
例えば、
- 絵を描きたいのであれば、鉛筆、ペン、スケッチブックなどの必要な道具を机の上の手の届きやすいところにセットしておく
- ジムに行きたい場合は、トレーニングウェア、シューズ、バッグ、水筒などをあらかじめ用意しておく
- ダイエットをしようと思っている場合は、週末に野菜やフルーツを切って、小分けにしておき、すぐに食べられるようにしておく
というように、あとはやるだけというところまで用意しておくと、取り掛かるまでの心理的ハードルがかなり下がるので、習慣化の成功率が上がります。
逆に悪習慣をやめたい場合は、その行動を行うまでのプロセスを複雑化したり、普段の行動範囲外に置いたりして、抵抗を大きくすることによって、やめることが容易になります。
例えば、
- テレビを見すぎていると感じたら、見終わるたびにコンセントを外す
- それでも十分な効果を得られなければ、さらにリモコンの電池を毎回抜く
- それでも十分な効果を得られなければ、テレビ本体を毎回クローゼットにしまう
のような感じです。
最後のやつはかなり極端ブヒな!
はは、そうだね!ここまで来れば存在自体を忘れるレベルだね
決定的瞬間(Decisive moments)
習慣とは高速のインターチェンジのようなものです。
一度入り口に入ってしまえば、立ち止まったり、後戻りすることはできません。
そして、合流車線から徐々にスピードを上げていき、本線へスムーズに合流します。
この時、たとえ道を間違えたことに気付いたとしても、次のインターまでその流れを止めることはできません。
習慣も同じように、一度始めてしまったことをそのまま続ける方が、中断して何か別のことに着手するよりもはるかに簡単です。
例えば、
- どんなにつまらない映画でも、途中で止めることができず、結局最後まで見続けてしまう
- スナック菓子を食べ始めると、お腹がいっぱいにも関わらず延々と食べ続けてしまう
- 一瞬だけスマホをチェックしようと思ったら、結局20分ダラダラとスクロールし続けてしまった
など、心当たりがあるのではないでしょうか?
一度行動を起こして流れを作ってしまうと、そこから軌道修正するのが途端に難しくなります。
なので、行動を起こす前に、よく考えて行動を選択する必要があります。
我々は一日を過ごす中で、たくさんの選択に遭遇します。
個々の選択は小さいものが多く、ほぼ無意識で選択してしまいがちですが、その選択ひとつひとつが今日という一日の良し悪しを決め、やがて未来の結果に大きなインパクトを与えます。
例えば、
- 食事をテイクアウトで済ますか、料理をするか
- 車で行くか、自転車で行くか
- 宿題に着手するか、ゲームのコントローラーを手に取るか
など、日常のあらゆる場面で決定的瞬間(Decisive moments)が訪れます。
この決定的瞬間において採用される選択が未来のあなたの選択肢を決めます。
例えば、「レストランに行く」というのは決定的瞬間です。
なぜかというと、これからあなたが何を食べるのかというのを確定させるからです。
厳密にいうと、そのレストランで何を食べるのかという選択権はありますが、そのレストランに入った以上、そのメニューの中からしかオーダーすることしかできません。
ステーキハウスに行ったなら、サーロインかリブロースを選ぶことができますが、寿司は選ぶことができません。
この決定的瞬間での選択によって、その後の選択肢が制限されます。
私たちの行動は、一つ一つの習慣が導く方向によって制限されています。
なので、一日に何度も訪れる決定的瞬間をいかに制するかが非常に重要です。
習慣とは導入部分であり、最終地点ではありません。
ジムでトレーニングするのが習慣なのではなく、ジムに行くという行動及びその道のりが習慣なのです。
2分ルール
新しい習慣を始める時、スモールスタートを意識した方が良いということは、すでになんとなく知識として入っているかと思います。
しかし、実際に新しいチャレンジをしようと思った時に、その高揚感やワクワク感から、どうしても最初から色々やろうとしてしまいがちです。
その結果、負荷が高過ぎて続かなくなったり、計画だけして実行に移さないということになりかねません。
習慣化を成功させるには、この初動の部分が最も重要であり、離脱率が最も高い期間でもあります。
そこで著者は、最初は2分以内で終わるような簡単すぎると思うことからスタートする2分ルールを提唱しています。
例えば、
- 1分瞑想をする
- 1ページ本を読む
- ランニングシューズを履く
など、物足りないと思うようなレベルのものから始めていきます。
新しい習慣を始める時は、
- 難しい
- 面倒臭い
- 大変
といったような、心理的な抵抗を感じてはいけません。
このフェーズでは、その習慣の技術の向上や自身のレベルアップは考えず、まずはその習慣を現在の生活の中に出現させるということが重要です。
そのために、最初はとにかくそのルーティン、特に導入部分を確立させることを最優先にします。
この期間では技術的な進歩はあまり期待できませんが、アイデンティティの強化は期待できます。
何もしていないのと、新しい習慣を意識して毎日2分行うのとでは、セルフエスティーム(自己肯定感)に雲泥の差があるからです。
そして、その導入に慣れたら徐々に負荷を上げていき、スモールステップを繰り返していきます。
例えばランニングの場合、
- ランニングシューズを履いてみる
- 10分散歩をする
- 1000歩ウォーキングをする
- 5kmジョギングをする
というような感じで、徐々に負荷を上げていきます。
実際にジョギングをするまでに3ステップもありますが、このくらい慎重に負荷を上げていった方がスムーズにシフトしていくことができます。
そのようにして正しい方法でコツコツと習慣を積み重ねていれば、最終的にはマラソン大会に出るといった目標を持つまでになります。
習慣の導入部分においては、方法を最適化するのではなく、標準化することに注力しましょう。
コミットメントデバイス
習慣化を成功させるためには、その習慣をいかに簡単にして続けやすくするかというのも重要ですが、それよりも障害となっている悪習慣をやりにくくしてしまった方が効果的な場合があります。
例えば、
- 22時に就寝することを目標にしている場合、オートタイマーで22時にルーターの電源を強制的に落とし、インターネットに繋げないようにする
- 食べ過ぎを防止するために、食材をまとめ買いするのではなく、1食分ずつ購入する
- 買い食いを防ぐために、外出する時は財布を持ち歩かない
など、予測される行動をあらかじめ制限してしまうという方法です。
また、ついついサボってしまうというような場合は、
- ヨガクラスを予約して、先に料金を払ってしまう
- 商談先の相手にメールをし、先に電話をかける日時を伝えてしまう
など、それをやらないと損をしたり、恥をかくという状況を強制的に作り出せば、やらざるを得なくなります。
このように、未来の予測される行動にあらかじめ制限をかけてしまうことをコミットメントデバイスと呼びます。
コミットメントデバイスは、良い習慣を不可避にし、悪い習慣を不可能にすることによって、習慣化の成功確率をアップさせてくれます。
ワンタイムアクション
習慣化を成功させるための鍵は、意思の力に頼らないということです。
これまで、環境の整備や方法論で習慣をコントロールする方法を紹介してきましたが、いずれの方法も基本的には毎回セッテングしたり、多少意思の力を必要とするものでした。
しかし、究極の方法として、1度その行動を行えば、その後半永久的に効果が持続し、常にその習慣を行わざるを得ない状況を自動的に作り出すワンタイムアクションというものがあります。
例えば、
- 食べ過ぎ防止のために、小さい器にする
- 良質な睡眠を確保するために、テレビを寝室から取り除く
- 生産性を上げるために、スマホの通知をオフにしたりサイレントにする
- 腰痛防止のために、しっかりとしたチェアまたはスタンディングデスクを買う
- 毎月給料から自動定額入金で貯金する
など、道具や技術の力を借りて、強制的に望む状況を作り出します。
現代は技術やサービスが進歩し、かなりの範囲で自動化が可能になってきています。
あなたのパフォーマンスを最大限に保つために、自動化できるものにはできる限り頼りましょう。
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習慣を制する第四の法則:楽しみにする
前章で習慣とはある結果を得るために行う障害(負荷)だというお話をしましたが、障害であるその習慣(行動)自体に楽しみを見出せるようになれば、さらに習慣化の成功率が上がります。
ポイントは4つあります。
- 即時報酬と遅延報酬
- やったつもり貯金
- 習慣を記録する(Habit tracking)
- アカウンタビリティパートナー
詳しく解説していきます。
即時報酬と遅延報酬
即時報酬
即時報酬とは、何かを実行した瞬間に得られる報酬です。
例えば、あなたがサバンナで生活していると想像してください。
おそらく日中常に考えるであろうことは、その日の食料や寝床、あるいはどのようにしてライオンや虎などの捕食者を避けて移動するか、というような今目の前で起こりうることに対しての選択がほとんどかと思います。
このように行なった行動に対して瞬時に得られる結果を即時報酬と言います。
遅延報酬
遅延報酬とは、その行動を実行して、ある程度時間が経ってから現れる報酬です。
現代社会で生きる我々の選択のほとんどは、遅延報酬に基づいて決定されています。
例えば、
- 会社でどんなにいい仕事をしても、昇給やボーナスが得られるのは数ヶ月
- 筋トレを始めても効果が出るのは数ヶ月後
- 老後のために貯金を始めても、十分な金額を得るのは数十年後
など、今日選択した行動から報酬を得るまでにタイムギャップがあります。
しかし、我々の脳はこの遅延報酬型の環境に適応するように進化していません。我々の祖先であるホモ・サピエンスが誕生してからおよそ20万年、現代人の脳のサイズはほとんど変わっていません。
それまで長らく続いた即時報酬型の環境から遅延報酬型の環境に変わったのは、ほんの500年前くらいのことです。
人類にとってこの変化はごく最近のことであり、当然のことながら脳はこの変化に順応できていないので、
- 喫煙を続けると後々健康に悪影響を及ぼすことがわかっているにも関わらず、脳がニコチンを今欲しているためついタバコを吸ってしまう
- 過食は肥満の原因と分かっていても、今起こっている空腹を満たすためについ食べ過ぎてしまう
ということが起こってしまいます。
逆に、筋トレやダイエットなど、良いとされている習慣の多くは、退屈だったり、苦痛を伴ったりして、その行動自体を純粋に楽しむということが難しいです。
なので、良い習慣を継続するには、その行動を行うことに楽しみや達成感を見出す工夫をする必要があります。
やったつもり貯金
我々が悪習慣をなかなか辞められない理由の一つに、その行動をしなかったことに対する報酬がないということが挙げられます。
例えば、その一本のタバコを今吸わなかったとしても、何も起こりません。
一ヶ月禁酒に成功しても、多少の体調の変化はあれど、基本的に劇的なことは何も起こりません。
ドーパミンによって制御されている我々の脳とって、報酬がないということは、価値がないということと同義です。
気合いと根性だけではこの即時報酬の力に屈することになります。
そこで有効な手段のひとつとして、やったつもり貯金というものがあります。
その名の通り、何かをやったつもりでその代金と同額のお金を貯金していくというシンプルな方法です。
まず、貯まったお金で何が買いたいかを決めます。
例えば、レザージャケットが欲しいという場合は、「レザージャケット」と書いたラベルを瓶に貼り、その中にお金を入れていきます。
そして、
- 毎朝飲んでいたスターバックスラテを買わなかったら500円貯金
- Netflixのサブスクを一ヶ月キャンセルしたら1,500円貯金
というように、擬似的な即時報酬を作り出すことによって、したいことをできなかったという欠乏感よりも、欲しいもののために一歩前進したという幸福感を感じることができ、「何かをしない」ということに対しての満足感を得られます。
じゃあ、げん丸くんにおやつあげたつもり貯金でもしょうかな
ブヒーー!そんな殺生な。。
ただし、この方法はあくまでも習慣を変える初期段階で短期間で行うテクニックです。
最終的にはその習慣によって形成されたアイデンティティ自体が習慣を強化していくので、このテクニックに頼らずとも習慣を継続することが容易になります。
習慣を記録する(Habit tracking)
毎日の習慣の成果を記録するというのも有効です。
記録を取るからにはちゃんとやろうという心理が働きますし、積み重なっていく記録を眺めること自体が満足につながります。
例えば、
- 筋トレの重量と回数
- 食事内容
- 読書したページ番号
- 禁煙日数
などを、ノートやアプリに記録していきます。
しかし、これらのように内容や結果を記録するよりも、さらに強力な方法があります。
それは、単純にその習慣を行ったらカレンダーに×印を書き入れていくという方法です。
例えば、瞑想を毎日すると決めた場合、月曜日、火曜日、水曜日…と、この×印の連鎖が続けば続くほど、この連続記録を止めたくないという心理が働きます。
DuolingoやELSA Speakといった英語学習アプリではお馴染みのストリーク(Streak)といえばピンとくる人もいるのではないでしょうか。
次に、習慣記録のメリットと注意点について詳しく解説していきます。
習慣記録のメリット
メリット1:行動のトリガーになる(Cue)
カレンダーに×印が並んでいくのを視覚的に認識することによって、常にその習慣への意識を高く保つことができ、次回の行動のトリガーになります。
そして継続(ストリーク)が可視化されていると続けずにはいられなくなります。
また、人間は主観で物事を捉えた時、自分の都合のいいように記憶を捏造するという性質があるので、記録という動かない証拠があることによって、継続状況を客観的に捉え、常に自分に正直で公正な判定を下すことができます。
メリット2:モチベーションを維持できる(Craving)
習慣記録によって進行状況を認識することが、モチベーションの維持につながります。
人は一度継続し始めたものを中断したくないという性質も持っています。
空欄を埋めないことによって、今までの努力が水の泡になるのではないかという恐怖が芽生えます。
なので、毎朝その日の空欄を見ることによって、その空欄を埋めたいという欲求が生まれます。
そのようにして、小さな勝利を日々重ねていくことが、さらなるモチベーションにつながっていきます。
メリット3:記録を眺めること自体が喜びになる(Reward)
このようにカレンダーに×印をつけたり、To-Doリストにチェックを入れたり、ワークアウトの記録を入力したりするといった行為自体が快感(報酬)となります。
これが習慣記録の一番のメリットです。
習慣記録とはすなわち、自身の成長の記録であり、自分に投資した時間とエネルギーの記録でもあります。
それらが徐々に積み重なっていくのを視覚的に眺めることによって、大きな満足感を感じ、さらなる成長へと加速していきます。
そして、その満足感が自己肯定感につながり、やがてアイデンティティが変化していきます。
結果よりもプロセスにフォーカスできるので、内容によってネガティブになったりやる気が失せたりするリスクも軽減できます。
つまり、習慣記録とはあなたが理想のセルフイメージに一歩一歩近づいているという証ということに他なりません。
習慣記録を行う際の注意点
記録すること自体が負担になってしまう
習慣記録が習慣化に優れた効果を発揮するということが分かりましたが、それでも行うのを躊躇する人が少なくありません。
なぜかというと、習慣記録自体が一つの新しい習慣であるため、一度に2つの習慣を始めるということになり、それが結構な負担に感じてしまうからです。
また、すでに取り組んでいることを改めて記録するということに意味を見出せない可能性もあります。
例えば、
- すでに食事制限に取り組んでいて食べるものは決まっているのに、さらにそれを毎回記録するのは苦痛でしかない
- すでにその他のやるべき仕事があるのに、営業電話の内容を逐一記録するというのは退屈でしかない
というように、人によってはデメリットの方が上回る可能性があります。
習慣記録は必ずしも全員におすすめする方法でありませんし、やったとしても一生続ける必要はありません。
しかし、ある一定期間においては非常に有効な手段であることは間違いないので、習慣の導入期間に少し行うだけでもも効果があります。
では、どうすれば習慣記録の負担を軽減することができるのでしょうか?
まずは、習慣記録をなるべく自動化するということです。
幸い今では、さまざまなアプリやスマートウォッチなど、自動で記録を取ってくれるツールが充実しています。
そこから必要なデータを抽出してカレンダーに転記するだけであれば、一からマニュアルでデータを記録するよりかは実現度が上がります。
次に、記録する習慣は一つに絞るということです。
全ての習慣を記録するのではなく、あなたが今一番重要だと思っている習慣を一つだけ選んで記録するようにしましょう。
最後に、そのアクティビティを終えたらすぐに記録するということです。
このアクティビティの完了が習慣記録のCueになります。
これは第一の法則で紹介したHabit stackingとHabit trackingを組み合わせて応用したものです。
私は[現在取り組んでいる習慣]のあとに[習慣記録]を行います
例えばこのような感じです。
- 私は[各トレーニングメニューの全セットを終えた]あとに[重量と回数の記録]を行います
- 私は[食事を終えて食器をシンクに運んだ]あとに[食事内容の記録]を行います
これらの方法を駆使すれば、たとえあなたが習慣記録をあまり楽しいと思えなくても、そこまで苦にならずに記録を継続することができるでしょう。
習慣記録を何週間か続ければ、あなたが実際どのように時間と労力を自分へ投資してきたかという統計が観測できるようになり、記録を眺めただけでニヤニヤしてしまうほどハマっていくことでしょう。
しかし、どんなに順調にストリークを伸ばし続けたとしても、いつかは必ず途切れる時が来ます。
実は、習慣をいかに継続するかということよりも、一度途切れた習慣をいかにして軌道に戻すかということの方が大事です。
2回連続で休まない
あなたがどんなに強い意志を持ってその習慣に対して取り組んでいたとしても、人として生活を送っている以上、不意の出来事というはどうしても避けられません。
例えば、体調を崩したり、仕事で地方に出張に行かなければならなくなったり、家族のための時間で自分の可処分時間が減ってしまったりということは誰にでも起こり得ます。
世の中完璧というのはあり得ないので、予定通りに物事が進まないということを前提に習慣に取り組む必要があります。
また、身体が疲れ切っていたり、精神的に落ちていたりして、どうしてもやる気が起きないという日もあるでしょう。
真面目な人ほど、そのことで自分を責めたり、失望してしまったりしてしまうかもしれません。
そこで、ひとつシンプルなルールを自分に課します。
たとえ1回休んだとしても、2回連続で休まないということです。
ストリークが途絶えてしまった時に、このルールを思い出しましょう。完全に心を折られることなく、再び習慣を継続することができます。
実際、1回休むのはそこまで影響はありません。
しかし、2回連続で休むのは負のスパイラルの始まりです。
要するに、1回のミスは単なるアクシデントですが、2回目のミスは新しい習慣の始まりということです。
習慣を継続する上で最も重要なのは、完璧にこなすことではなく、いかに調子の悪い時でも実行できるかということです。
そのためには、ゼロにしないということが鍵となります。
モチベーションやコンディションが下がっている時、良い結果が出ないということに対しては気にする必要はありません。
それよりも、気分が乗らなかったがそれでもタスクをこなしたということが重要です。
この、「それでもやる」ということがあなたのセルフイメージを強化します。
完璧にできないのであれば何もやらない方がいいという0/100の考え方は危険です。
例えばジムであれば、たとえ疲れていてやる気がない時でも、とりあえずジムに行くということが大事です。
この時点でほぼその日のタスクは達成しているので、あとはトレッドミルを15分やって帰ってもいいのです。
もちろん、トレーニングのパフォーマンスは上がりません。しかし、あなたのアイデンティティは確実に強化されています。
習慣記録の本来の役割は習慣を持続させることではなく、習慣から離脱するのを防ぐことです。
数字に固執しない
習慣記録のもう一つのデメリットは、数字を目標にしてしまうということです。
基本的に数値で表せるものを記録していくので、どうしても数字にフォーカスしてしまい、とにかく数字だけを伸ばそうとして、本来の目的を見失いがちです。
例えば、
- 読書したページ数を伸ばすことだけを目標としてしまい、内容を咀嚼して読んでいない
- ダイエットで体重を落とすことだけを目標としてしまい、健康的な見た目やライフスタイルを疎かにしている
というように、なぜその習慣をしようと思ったのかという当初の目的から外れ、ただ単に数字のみを追い求めるモードに入っていしまいます。
現代人は数値やデータで動いている世界に住んでいるので、数値というものを過大評価し、儚さや優しさといった数や量では表せないものを軽視してしまう傾向があります。
しかし、数や量で測れないからといって、それらのものは全く重要ではないということではありません。
むしろ、そのようなものの中にこそ、物事の本質や本来の目的が隠れているといったことがあります。
例えばダイエットであれば、体重を計らず見た目だけで判断して行う方が効果的ということがあります。
数字は頑固で一切の容赦がないので、少し体重が増えただけでも、あなたはがっかりしてやる気を失ってしまうかもしれません。
しかし数値は一旦忘れて、そのほかのことに注目してみると、実は健康的な食事に変えたおかげで肌が綺麗になっていたり、早起きが習慣になっていたり、以前より活力に満ち溢れている、ということに気づきます。
もし、体重という数字を記録することに疲れたならば、数値では表せないあなたの気分や健康状態などを記録していくのも悪くありません。
アカウンタビリティパートナー
これまで、習慣を行なった直後に得られる即時報酬によって、習慣を継続することができると説明しましたが、実は習慣を行わなかったことによって与えられる苦痛を避けようとすることによっても習慣を継続することができます。
この痛みというのは、喜びよりも効果的な場合があります。
成功で得られる報酬よりも、失敗によって与えられる罰則の方が強力です。
失敗することによる罰則が重ければ重いほど必死にそれを避けようとしますし、何も痛みを伴わないものであれば無視されるだけです。
そして、罰則を与えられるタイミングが早ければ早いほど効果があります。
駐車違反やスピード違反の罰則があるから、ほとんどの人は法定を守ろうとするんブヒな
うん、残念ながら罰則がなければ、ほとんどの人が守らないというのも事実だからね
この習性を利用するために、失敗したら自らに罰則を課さなければいけない環境を意図的に作りるのですが、自分だけの取り決めだと無かったことにしてしまうので、第三者に宣言して避けられない状況にします。
この自分がやると決めたルールを宣言する相手のことをアカウンタビリティパートナー(Accountability partner)といいます。
アカウンタビリティパートナーに自分が定めた習慣の目標とそれが守られなかった時のペナルティを伝えます。
こうすることによって、自分との約束でしかなかったものが他人との約束に変わります。
すなわち、このルールを守らないということは、その誰かとの約束を破るということになります。
我々の脳は他人からの信頼を失うということに恐怖を感じるようにできているので、どんなにやる気がなくても自分の印象が悪くなる不快感よりはマシだと感じ、いやいやでもその行動を実行するようになります。
なので、このアカウンタビリティパートナーは、恋人や友人など自分との距離が近い人の方が効果があります。
また、そのような近しい人がいないという人は、SNS上で宣言するのも悪くありません。
リアルよりもバーチャルの世界での方が臨場感を感じることができる人はそちらの方が効果があるでしょう。
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習慣のその先へ
習慣はあくまでも、何かを成し遂げるためのツールの一つですが、成功がすべて習慣で決まるわけではありません。
習慣とはあくまでも表面的なテクニックであり、その先にはもっと根源的な問題や人生の方向の定め方というものがあります。
この章では、習慣というものをさらに俯瞰した位置から捉えて、どのように習慣を捉えて、活用していくのが良いのかというところを深掘りしていきます。
生まれ持った才能について
才能に合った道を選ぶ
どんな人にも生まれながらにして得る才能や条件というものがあります。
恵まれた体格、整った顔立ち、親の経済力、忍耐強さなどの先天的な条件は変えることができません。
そして条件によっては、いくら自分がやりたいと思っても、身体的または経済的理由で挑戦することすらできない場合もあります。
また、ある人は特定の分野で際立った才能を持って生まれてきます。
しかし、たとえ天賦の才を持っていたとしても、あらゆる場所で輝けるわけではありません。
例えば、
- マラソンの金メダリストが短距離走に挑戦してもいい結果は得られない
- ボディビルのチャンピオンが水泳に挑戦してもいい結果は得られない
というように、それぞれの分野での適正というものがあるので、どんなに天才でも選ぶ領域を間違えると宝の持ち腐れとなってしまいます。
あのバスケの神と呼ばれたマイケルジョーダンさえ、野球に挑戦したときは活躍することができなかったしね
でも大谷翔平はサッカーやバスケをやっていてたとしても天下を取っていそうブヒな!
何かで成功を収めたいと思って何かに挑戦しようと思った時、ただ単に「好きだから」や「かっこいいから」という理由だけでその道を選んでしまうと、成功する確率が著しく下がってしまいます。
特に成功を目指していないという場合であれば構いません。
しかし、これから自分の好きなことのいくつかを犠牲にし、時間と労力を注いでその何かを達成しようと思っているとしたら、まず最初に成功する確率が最大値になる正しい領域を見つけることが重要です。
ただ勘違いしてはいけないのは、先天的な条件はあなたの運命を決めるものではなく、あくまでも可能性の領域を決めるだけです。
自分の才能に適していようがいまいが、成功するには習慣の力が必要です。
しかし、自分の才能に適している領域であればあるほど、行う習慣が苦になりにくく、楽しみながらできるという傾向があります。
鍵となるのは、自分の得意分野で勝負し、努力を正しい方向に定めるということです。
正しい方向の条件は2つあります。
- ワクワクすること
- 生まれ持った才能にマッチしていること
この二つのどちらが欠けてもいけません。才能と熱量がハマっていることが重要です。
あなたの性格はどのように習慣に影響するのか?
あなたの遺伝子は確実に習慣に影響を与えています。
眼に見える領域ではなく、もっと奥深く潜在意識レベルですべての行動・選択の決定を担っています。
例えば、結婚や離婚、ドラッグやアルコールなどの依存症まで、あなたがどのような道を選ぶのかというは、すでにある程度遺伝子レベルで決まっています。
そこで、習慣や行動のプランを立てる前にまずはあなたの性格を分析して、適切な行動指針を打ち出す必要があります。
もっとも信ぴょう性のある性格分析の指標のひとつにBig Five(ビッグファイブ)というものがあります。
この指標を使って、まずはあなたはどういう人間なのかということを可視化しましょう。
- 経験に対しての寛容度
- 好奇心旺盛・独創的 ←…→ 用心深い・一貫性
- 真面目さ
- 几帳面・効率的 ←…→ 気楽・自由奔放
- 社交性
- 社交的・活力的 ←…→ 一人が好き・人見知り
- 同調性
- 友好的・同情的 ←…→ 挑戦的・公平
- メンタリティ
- 不安症・神経質 ←…→ 自信がある・落ち着いている・安定している
この5つの項目はすべて生まれつきの性質です。
習慣は必ずしも性格だけで決まるわけではありませんが、ある一定の方向性を示していることは疑いようがありません。
まずは自分という人間を客観的に分析し、その性格に合った習慣を模索する必要があります。
例えば、極度の人見知りの人にとってはグループに属して他人と一緒に何かをするというのは苦痛でしかないので、一人で黙々と習慣を積み上げていく方が向いているでしょう。
一方、人と関わるのが好きな人は、逆に人の目がないと挫折してしまい、誰かと一緒にやった方がモチベーションを保てて習慣を継続しやすいということがあります。
このように、ネットや自己啓発書から学んだ知識をこれは良さそうだとそのまま適用すると、自分の性格に合っていない場合があるので、まずはその内容が自分に合っているかどうかを考察する必要があります。
大事なのは、その習慣を行うことによって、自分が楽しい・嬉しいと感じることができるかということです。
心のワクワクを大切にすればいいブヒな!
そうだね!逆に理論上はいいと思ったものでもモヤモヤ感がある場合は合っていない可能性があるから、注意して自分の心を観察しよう
勝負できる土俵で勝負する
成功するための前提条件として、まずは得意なことを選ぶということです。
得意なこととはすなわち、やっていて苦にならないことです。
ここで注意したいのは、好きなことと得意なことは必ずしも一致しないということです。
とはいえ、いくら得意でも嫌いなことであったり、楽しいと感じないことは続きません。
では、どのようにして自分が勝負できる道を判断すればいいのでしょうか?
次の質問に答えてみてください。
- あなたには楽しいと感じるが、ほかの人にはそうではないものは何か?
- 時間を忘れて夢中になれるものは何か?
- ほかの平均的な人よりも、あなたの方が多くのリターンを得られるものは何か?
- あなたがあなたらしくいられるものは何か?
かなり的は絞られてきたのではないでしょうか?
しかしながら、いくら得意なものでも、ある一定のレベルまで達すると必ず壁にぶち当たります。
そこからさらに上を目指すかどうかは、あなたの才能を見極めて判断する必要があります。
残念ながら、すべての人が自分の得意な分野で勝負できるとは限りません。
時には自分の才能の限界を見極め、早々に撤退する勇気も必要です。
しかし、だからと言って完全にその道を諦める必要はありません。
あなたがその分野でのベストになれないのであれば、今あるスキルを組み合わせて、誰もやったことがないことを生み出せばいいのです。
こうすることによって、生まれつきの才能のハンデをある程度無効化できます。
真の成功者とは、何かのゲームでトップになる人ではなく、新しいゲームを創造する人です。
才能を最大限に活かすにはどうすればいいのか?
私たちの才能はいかにハードワークをしないで取り組むことができるかではなく、何にハードワークをして取り組むべきかということを教えれくれます。
あなたの性格とスキルにフィットしたものを選び、それにエネルギーと時間という貴重なリソースを投資して、易しいと感じるものでハードワークをするというのが正解です。
いくらあなたに才能があっても、それに取り組まなければ、成功というのはあり得ません。
例えあなたにボディビル世界チャンピオンになる素質があったとしても、実際のチャンピオンがこなす量のトレーニングをしてみないことには、本当にあなたに才能があったのかどうかはわからないのです。
要するに、才能があるが故に人よりも努力することができるということです。
言い換えると、才能があるとはその分野で誰よりも努力ができる特権を得たということだけなので、努力なしにポテンシャルを最大限発揮できるという魔法でもチートでもありません。
結局、才能を最大限活かすには最大限に努力するほかありません。
得てして真の成功者は己の努力をいたずらにひけらかさないので、我々凡人は彼らは運が良かっただけと片付けてしまいます。
しかし、彼らの成功は毎日やるべきことをやってきたという自信と自分はできるという信念に裏付けされたものであって、決して運だけで辿り着けるような境地ではありません。
モチベーションの保ち方
絶妙な難易度のバランスを保つ
難易度というのはモチベーションを保つ上で最も重要な要素の一つです。
簡単すぎてもつまらないし、難しすぎても嫌になってしまいます。
ものすごく頑張ればギリギリ勝てそうというのが最適なレベルです。
我々の脳はチャレンジが大好きなので、自分の能力の最大値を使う必要があることを行なっているときに、最高のモチベーションを感じます。
習慣を始めたばかりの頃は何よりも継続して行うことを優先しますが、ある程度習慣化された後は小さな成長を続けることが重要になります。
小さな向上と挑戦の連続があなたをその習慣に留めさせます。
このちょうどいい塩梅のゾーンのことをGoldilocks Zone(ゴルディロックスゾーン)といいます。
このゾーンに入るといわゆるフロー状態に入ることができ、集中力とモチベーションが切れることなく持続します。
そのためには常に新しい達成可能な挑戦を模索し、同じことの繰り返しにはならないようにすることが大切です。
退屈と感じた時の集中力の保ち方
アスリートやスポーツ選手において、偉大な選手とそうでない者の違いは、いかに退屈な練習を毎日淡々とこなすことができるかどうかです。
これは決して成功している人が退屈を感じにくい性質を持っているということではありません。
彼らも我々と同様、同じことを繰り返していれば退屈を感じますし、それによって起こるモチベーションの低下も経験します。
しかし、それでもやる方法を見つけるのが彼らなのです。
成功を目指している人にとって一番怖いのは失敗ではなく退屈です。
才能があるないに関わらず、誰にでも辞めたいと思う瞬間は訪れます。
プロとアマチュアの違いは、スケジュールにコミットするか、成り行きで過ごすかです。
やると決めたものはやり抜くのがプロってことブヒな
うん、逆にその時の気分でやるかどうかを決めるのがアマチュアだね
救いとなるのは、たとえモチベーションが下がった状態で行なったことでも、それを行なったことに対しては決して後悔はしないということです。
なので、とにもかくにもやるべきことはやるという基本的なことが一番大事ということになります。
成功するには退屈を愛する覚悟が必要です。
習慣の副作用
行動の自動化によって、ミスを発見しづらくなる
習慣化することによって、技術・スピード・流暢さなど全体的なクオリティが向上し、最終的には全ての工程がほぼ自動化し、労力や意思の力を必要とせずに実行することができるようになります。
しかしこの自動化には落とし穴もあります。
それは、行動を自動化することによって小さなミスを発見しづらくなるということです。
習慣化されていない最初の段階では、一つ一つの工程を意識的に行い、不備はないか確認しながら行います。
しかし、もう十分うまくできるというレベルまで達すると、それ以上の向上をしなくなります。
ある研究では、一度マスターレベルまで達すると、その後少しずつパフォーマンスの質が下降していくということがわかっています。
何かをマスターするには習慣は絶対に必要ですが、一方で意識的な練習も継続して行う必要があります。
習慣の自動化による技術向上の鈍化を防ぐにはどうすれば良いか?
この習慣の自動化による技術向上の鈍化を防ぐには、定期的に内容や目的を振り返るのが効果的です。
例えばこのような質問をあるタイミングで自分に問いかけます。
- 今年うまくいったことは?
- 今年うまくいかなかったことは?
- 何を学んだ?
行なった習慣について毎回フィードバックするのはよくありませんが、全く振り返らないのもよくありません。
このようにして、ある期間ごとにその習慣を振り返り、改めて分析することで、知らずに行なっていた間違いや欠陥に気づくことができます。
習慣を振り返ってアップデートするということは行動の変化を再認識すること、すなわちアイデンティティの変化を認識するということです。
あなたの成長を阻む固定観念をどのように壊していくか?
習慣を成功させていくにつれて理想のアイデンティティに近づいていきますが、そのことが次のレベルへの成長を阻んでしまう場合があります。
初心者の頃は失敗やそれに対するアドバイスにも真摯に向き合います。
しかし、段々と上達していくに従って、何かうまくいかないことがあっても、プライドが邪魔をして素直に弱点を認めることができず、真の成長を阻害してしまいます。
ある程度習慣をマスターすると、一つの方法に固執して他の方法を認めなくなります。
解決策はアイデンティティをなるべく小さく保つこと、すなわち謙虚になることです。
こうするべき、これが最善、という凝り固まった考えは人生の変化に対して対応できなくなってしまいます。
「私は何者だ」という強固なアイデンティティに固執するのではなく、「私はどのようなタイプの人間だ」という柔軟性のあるアイデンティティを持つことを心がけることです。
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