今や小学生の英語学習にも取り入れられているほど、その効果が認められている英語多読ですが、NPO多言語多読が提唱する多読三原則がハードモードすぎて、挫折する人が続出するのではないかと危惧しています。
こちらが実際のルールです。
https://tadoku.org/english/three-golden-rules/
- 辞書は引かない
英和辞典は使いません。知っているかもしれない文法知識も使わないことにしましょう。そして、できるだけ英語を日本語に訳したり分析したりしないで、英語を英語のまま読みます。- 分からないところは飛ばす
辞書は使わないのですから、当然分からないところが出てきます。そこは、単語だろうと文であろうと、前後から推理することさえしないで、単に飛ばして先に進みます。そう、分からないところは無かったことにしましょう。- 合わないと思ったら投げる
1、2の原則で楽しく読めない本だったら止めて、楽しめそうな次の本に移ります。
これを読んで、
そんな無茶な、、
と、すでに敗戦ムードが漂っていないでしょうか?
辞書を使わないでどうやって内容を理解するの?
さすがに分らないところを無かったことにはできないブヒよ
楽しめない本だったら止めてって、、そんなやり方で楽しめるはずないじゃないか!
そんな声が聞こえてきそうです。
私は基本的にはこのルールに賛同しています。
しかし、さすがに私もこの三原則は極端すぎるなと思うところがあるのも事実です。
今回は、多読歴10年以上の経験の中で見出したこの三原則の本来の意図と、試行錯誤を重ねて確立した私なりのアレンジや、多読を行う上での心構えを紹介します。
多読三原則①【辞書は引かない】
辞書を引かないことにはすぐに慣れる
辞書を片手に勉強する日本の学校の英語学習に慣れている人は、分らない単語をそのままにするということに抵抗があるかもしれません。
また、日本人は比較的真面目な人が多く完璧主義な傾向があるので、このアバウトさは看過できないという人も少なくないでしょう。
私も以前はどちらかと言うと、そのタイプでした。
しかし、一度多読の魅力にハマると、いちいち意味を調べるのが煩わしくなり、自然と未知語は飛ばして読むようになります。
意味を調べたいという欲求よりも、早く先が知りたいという欲求が勝ちます。
そして、この未知語を飛ばす読み方によって、単語ごとへのフォーカスが弱まりますので、より文章全体の輪郭がはっきりとし、俯瞰で状況を眺めることができるようになります。
結果的に、単語をその都度調べていた時よりも、その単語を深く理解できるようになります。
感覚的な順番として、単語ファーストでフレーズを追いかけるのではなく、フレーズありきで単語を認識するのが正解です。
最初は消化不良を起こしたような不快感があるかと思いますが、すぐに慣れるので、騙されたと思って辞書を引かずにしばらく進めてみましょう。
辞書引くのはOK:ただしある程度ルールを決めて
基本的に辞書を使わずに進める多読ですが、そうは言っても、ストーリーを理解する上でどうしても必要な単語も出てきます。
また、同じ単語が何回も出てくる時があります。
何回も出てくると言うことは、覚えるべき重要語だということです。
頑なに辞書を使わないという掟を守るのも悪くはないですが、それが原因でモチベーションが下がったり、挫折してしまったりしたら本末転倒です。
その辺は柔軟に対応しても良いと思っています。
しかし、その時の気分で辞書を使うようになると、また辞書がないと落ち着かない状態に戻ってしまいますので、ある程度ルールを決めて辞書を使用するようにした方がいいです。
例えば、
- 10回以上同じ単語が出てきた時
- 内容を理解する上でどうしても外せない単語が出てきた時
- 同じページに3回以上同じ単語が出てきた時
などの条件を満たした時に、初めて辞書を使えるという自分ルールを設ることで、いちいち辞書を引こうかどうしようかと迷うことがなくなります。
私はマイルールとして、その本を読んでいる時以外でもその単語のことをすぐに思い出せるようになった時に意味を確認するようにしています。
その単語のことが普段でも頭に浮かぶと言うことは、すでにそれが顕在意識に上がってきていると言うことです。
正確な意味はわからなくとも、その語の持つ表情・性格・温度・色感覚など、ぼんやりとした輪郭はすでに多読を通して固まっているので、あとは意味を確認すれば、その時点でアクティブワードとして保存されるのです。
あの単語の意味が気になりすぎて夢にまで出てくるブヒよ!
はは、あまり我慢しないで、辞書は適度に利用しよう!
どのようなルールで辞書を使うとしても、一つだけ重要なことがあります。
それは、本文を読んでいる途中で辞書を使わないということです。
理想は、多読をしていない時か多読を終えた時です。
今読んでいる章が終わったところやキリのいいところで辞書を使ってもいいのですが、私はあまりおすすめしません。
また、わからない単語が出てくるたびにメモを取ったり、ポストイットを貼ったりすることもしない方がいいです。
なぜなら、集中力は一度解いてしまうと、再度集中し直すのに時間を要し、膨大なエネルギーを消耗するからです。
自転車に乗った時のことを想像してみてください。
一番パワーと時間を要するのは、止まっている状態から動き出す時です。
一度加速し始めると、その後はそんなに必死に漕がなくても、自転車の推進力でスムーズに進むことができます。
しかし、一度完全に止まってしまうと、再発進するのに再度フルパワーを出す必要があります。
人間の集中力の扱いもこれと同じことが言えます。
集中力を要する作業に共通して言えるのですが、特に英語多読の場合は必要とされる集中力のレベルが高いので、この時間は多読をする時間と決めたら、余計なものは挟まず一気に読み進めた方がいいです。
多読三原則②【分からないところは飛ばす】
推理はしないが推測はすべき
多読三原則では、
前後から推理することさえしないで、単に飛ばして先に進みます。そう、分からないところは無かったことにしましょう。
とありますが、私はある程度前後の文脈から推測しながら読む方がより実践的だと思っています。
「推理」と「推測」ほぼ同じような意味の言葉ですが、微妙にニュアンスが違います。
- 推理(すいり)
ある事実をもとにして、まだ知られていない事柄をおしはかること。 - 推測(すいそく)
ある事柄をもとにして推量すること。
要するに、推理は分かっている事実をもとに、さまざまな考察を経て、現時点で分かっていないことのへ答えを追求することです。
一方、推測はその時点で分かっている事実から、多分こういうことだろうなと予測し、ある程度の答えを暫定的に定めることです。
実際の会話では、わからない単語や聞き取れないフレーズが出てきても、いちいち相手の発言を遮って意味を尋ねるようなことはしません。
お客様としての扱いを受ける英会話教室であれば可能かもしれませんが、ある程度対等の立場でコミュニケーションをとっている場合は、その他の理解できた部分を総動員して、おそらくこのようなことを言っているのだろうとある一定の結論に落とし込んでいるはずです。
多読でも全く同じように、前後の文脈からその単語の何となくの意味を想像します。
最初のうちは、
これは動詞を修飾しているから副詞だな
というように、品詞くらいしか断定できないでしょう。
それでも何度か同じ単語に違う場面で出会う度に、
この形容詞が出てきた時はいつも激しい感情が伴うな
小さくて、丸っこくて、素早くて、木に登る動物といえばあれしかないブヒな
この動詞が出てきたあとは、必ず人が亡くなっているな
など、徐々にその単語の持つ特徴やキャラクターが掴めてきます。
そして、20回も出会った頃には、正確な意味を知らなくても気にならないくらい文章に溶け込むようになっています。
これくらいの状態になったら、気が向いたときに辞書で実際の意味を確認するといいでしょう。
全く知らない単語ではなく、よく知っているが自分の中でまだ定義されていないだけの単語なので、意味を調べるというよりは確認するというイメージに近いです。
定義を確認したときに、
ああ、やっぱりそんな感じだと思ったよ
と、大体想像したような内容であり、著しく想像と乖離していたということはめったに起こりません。
返り読みをしない・分らない箇所にフォーカスしない
おそらく、このルールの本来の意図は、返り読みをする癖を無くすようにあえて極端な表現になったのではないかと解釈しています。
私もこの意見には賛成です。
前後の文脈から推測するというと、その単語にフォーカスを当てて前後の文を行ったり来たりして推測すると思われがちですが、これをしてしまうと当然返り読みをすることになります。
そうではなく、あくまでも文章は一方通行で読み進めつつ、通り過ぎていく未知語に霧がかかったようなイメージでぼんやりと見ます。
入口と出口(前後の文脈)がはっきりしていれば、その途中で霧が出てきても、何とか道に迷うことはありません。
そのようにして、時折現れる霧の中を止まらずに真っ直ぐ進んでいき、視界が晴れた瞬間に前後の文脈をを繋いで大筋から外れないようにするというイメージです。
まとめると、この文言の解釈は次のとおりです。
- 「前後から推理することさえしないで、単に飛ばして先に進みます。」→ 返り読みをしない
- 「分からないところは無かったことにしましょう。」→ 分からない箇所にフォーカスしない・引っかからない
多読三原則③【完読せず途中で辞めてもよい】
読みやすさと楽しさは比例しない
多読の三原則の3つ目の説明には、
1、2の原則で楽しく読めない本だったら止めて、楽しめそうな次の本に移ります。
とあります。
まだ英語力に自信がないから、簡単なものじゃないと楽しめないな
多読の経験が浅い人は、このように思っている人が多いかもしれません。
実際に私も多読を始めた頃はそのように思っていたので、小学生向けの小説を読むことにしました。
最初は英語の本を読めるということ自体に興奮していたので、児童書でもそれなりに楽しめました。
確かに使われている英語は比較的簡単で、文章も読みやすいので、そういう意味では、内容を理解できる=楽しめるということなのかもしれません。
しかし、何冊か児童向けのペーパーバックを読み終えた時に、どこか物足りなさを感じるようになりました。
そこで、思い切って今度は純粋に興味がある内容のものを、難易度度外視で選ぶようにしました。
想像した通り、使われている英語のレベルは児童書に比べて段違いに難しかったです。
普通ならとっくに挫折してもおかしくないレベルです。
英語学習の観点からすると、レベルが合っていないのでやめるべきと忠告されるでしょう。
しかし、心から読みたい・知りたいと思う内容だったので、只々その先を知りたいという純粋な知的好奇心が勝り、いつのまにか英語が難しいとか効果がどうとかというのは問題ではなくなりました。
一般的に多読におすすめされる理解度は80〜90%です。
未知語が1ページに2〜3個程度までなら許容範囲とされていますが、私の場合は、大体1ページに10個、多い時には20個程度あったでしょうか。
確かに英語自体の理解度は50〜60%ほどだったかもしれません。
ですが、それでも十分に内容を楽しむことができましたし、少なくとも内容をより理解できる児童書よりも楽しむことができました。
全部理解できなくても良いし、全部読まなくても構いません。
自分が納得して読むことができていれば、十分自分にとってプラスになっていますし、失敗というものはありません。
どうしても読みたい本があれば、勇気を持って一度読んでみることをおすすめします。
パラレルリーディング(並行読書)もおすすめ
楽しめなくなったら完読せずにすぐ次の本に移っても良い、というのが多読の良いところの一つですが、できればそんなにすぐには諦めたくないと思う人もいるかと思います。
一度休憩して、しばらくしたら再度挑戦しようと思う人もいるかもしれません。
そのような時は、複数の本を同時進行で読んでいくパラレルリーディング(並行読書)がおすすめです。
ですが、多くの人はこう思うかもしれません。
一冊の本を集中して読みたいな
こっちの本をまだ読み切っていないのに、別の本に手を出すのは気持ち悪いな
私も最初はそのように思っていました。
しかしそのうち、読みたい本が増えてきたのと、内容の濃い科学書をずっと読むのは結構辛くなってきて、
食後はまったりするから、もっとカジュアルな小説が読みたいな
寝る前は疲れているので動物の話で癒されよう
一番集中できる朝に科学書やビジネス書を読もう
というように、時間帯や状況によって読む本を変えるようにしました。
今は同時に3冊の洋書(Audible1冊含む)を読むようにしています。
もちろん、その分一冊の本を読み終えるまでの期間は長くなりますが、適材適所で読む本を変えているため、全体的な読書量はむしろ増えています。
また、パラレルリーディングのもう一つの効用として、どれか1つが行き詰まっても、同時に他の本も読んでいるので、停滞感を感じなくて済むということです。
諦めそうになった本は一度休憩して、他の本を読み進めつつ、気が乗ってきたらまた再開するということもスムーズにできます。
いろいろな本を読んだ方が記憶の定着もしやすいのでおすすめです。
洋書多読を始めてみたいけど、
何から読んでいいかわからない
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多読三原則は意識しつつ、自分が心地よいと感じる方法で読もう
多読三原則はともすると無謀にも聞こえますが、多読の本質を見事に捉えています。
矛盾するようですが、いったん英語の勉強ということは忘れて内容にフォーカスしてみましょう。
「楽しかった」「ためになった」だけでもいいですし、「読んでいて腹が立ってきた」とかでも良いんです。
逆説的ですが、英語を意識しないで英語の本を読むと英語がより分かるようになります。
もちろん、人それぞれレベルの違いや、性格の違いがありますので、自分が「心地よい」「長く続けられそう」と感じる方法で多読を楽しんでほしいと思います。
- 辞書は引かない → その都度辞書を引かないで多読以外の時間で意味を確認する
- 分からないところは飛ばす → 返り読みをせずある程度前後の文脈から推測して読み進める
- 完読せず途中で辞めてもよい → 難易度よりも興味があるかどうかで素材を選ぶ