なぜスキルを身に付けるのにディープワークが必要なのか?
の記事では、これからの時代を生き抜くためは、
- 難しいことを素早く習得する能力
- クオリティとスピードを兼ね備えたエリートレベルの生産能力
の2つの能力が求められるというお話をしました。
本書では、この2つのスキルを身につけるには、ディープワークが必須だと述べています。
そこで、今回は、
- なぜスキルを身につけるにはディープワークが必要なのか?
というテーマについて、深掘りしたいと思います。
それでは、始めていきましょう。
『Deep Work』シリーズ記事一覧
- 完全要約版
- ディープワークとは?
- ディープワークの価値
- ディープワークの希少性
- ディープワークの意義
最高の集中を手に入れたい人へ
なぜスキルを身につけるにはディープワークが必要なのか?
本書では、ディープワークがこの2つの能力を開花させるために必要な理由を次のように述べています。
The two core abilities just described depend on your ability to perform deep work.
Deep Work, P32
要約すると、
この二つの核となる能力は、単純にどれだけディープワークできるかで決まる。
となります。
つまり、
ディープワークする能力=ポテンシャルの限界値
と言うことができます。
では、どのようにしてディープワークがこれらの能力に関与しているのかを論理的に見ていきましょう。
ディープワークで難しいことを素早く習得できる理由
天才の条件はディープワーク能力
まず第一に、何かを学ぶという行為には、高いレベルの集中が必要だということです。
これは、単に集中の強度だけではなく、一つのことにエネルギーを集中させ続ける期間の長さも含まれます。
世の中には、人には難しく見えることをいとも簡単にやってのけてしまう「天才」と呼ばれる人たちが存在します。
しかし、天才と凡人を分けるのはただ一つで、この道で生きていくと決めたことに対して、己の持てる力をフルコミットする才能があるかどうかです。
では、このような飛び抜けた強度で訓練するためにどうすればいいのでしょうか?
そのために必要な要素が2つあります。
- あなたがマスターしようとしていることに、意識が一点集中している
- フィードバック→改善という環境下で、常に生産性を高めることに意識が集中している
つまり、天才とは桁外れの集中力と実行力を兼ね備えた才能の持ち主ということが言えます。
Men of genius themselves were great only by bringing all their power to bear on the point on which they had decided to show their full measure.
Deep Work, P35
脳科学的なディープワークの影響
ディープワークが才能開花にどのように影響するかは、脳科学的な視点からも説明することができます。
我々の脳内には「ミエリン(myelin)」という、ニューロンの周りを覆った脂肪性組織があります。
我々が何か新しいスキルやアイデアを習得する時、ニューロンが発火するのですが、このミエリンが多いとより効率よく綺麗に燃えるようになり、脳の回路を削減することができます。
つまり、ミエリンが増えることで、技術が向上していくということになります。
そして、一つのことに集中し繰り返し練習すること、つまり特定の脳回路のみを使用すると、「オリゴデンドロサイト(oligodendrocytes)」という細胞がミエリンの脂肪の層をニューロンに覆うようになります。
そうすると、反復練習をしなくても、恒常的にそのスキルを実行することができるようになります。
しかし、そこでSNSやその他の通知に気を取られて低集中の状態になると、別の脳回路が燃えてしまうため、ミエリンの層が狙ったスキルに関する脳回路にできにくくなります。
したがって、何かに本気で取り組みたいときは、形になるまではとにかく一点集中が鍵となります。
To be great at something is to be well myelinated.
Deep Work, P36
ディープワークでエリートレベルの生産ができる理由
圧倒的な生産性を実現するためのキーワードは次の2つです。
- バッチング
- シングルタスク
それぞれ解説していきます。
バッチングで一つの仕事をまとめて行う
バッチングとは、
- 難しくて重要な知的労働を
- 邪魔の入らない環境で
- まとまった時間行うこと
です。
つまり、「この仕事しかしない」というある一定の期間を設け、その間は他の仕事は一切しないようにします。
本書で紹介されているある大学教授の例では、次のようにバッチングしていました。
- 授業がある秋季は、生徒に良い授業を提供することに徹して、自身の研究やリサーチは一切行わない
- 授業がない春季と夏季は、生徒や同僚とのコンタクトを遮断して、自身の研究に没頭する
ただ、この例はこのような極端なタスク分配が可能な大学教授という職種だったということもありますが、もう少し短いスパンでのバッチングは一般的なビジネスパーソンでも適用可能かと思います。
例えば、次のような感じです。
- 週の前半は自社の製品についてのリサーチや理解を深めることに使う
- 週の後半はひたすら人と会ったり、人脈を広げるような活動に専念する。
このように、一日の中でタスクを分割するよりも、一定期間集中して一つのタスクを行った方が生産性が上がります。
なぜなら、仕事の生産性は次の方式で算出されるからです。
仕事のクオリティ =(かけた時間)×(集中の強度)
High-Quality Work Produced = (Time Spent) X (Intensity of Focus)
Deep Work, P40
シングルタスクで一つの仕事に集中する
現代では、いかに多くの仕事を同時にこなせるかという「マルチタスク」の価値が上がっている風潮があります。
その反面、一度の一つのことしかしない「シングルタスク」は、時に不器用さや、能力の低さの象徴とされる場合があります。
しかし、ある研究結果では、同じボリュームの仕事をこなした場合、最終的に生産性が高かったのはシングルタスクの方でした。
脳の構造上、マルチタスクを行うことは不可能で、起用にマルチタスクを行っているように見えても、実際はタスクに対する集中力を高頻度でスイッチングしているだけということになります。
さらに、タスクのスイッチングは、集中力を著しく低下させます。
自分ではモードを切り替えたと思っていても、脳内ではその前のタスクへの集中が残っていて、今目の前にあるタスクに100%リソースを使えない状態になっています。
例えば、何かのタスクを集中して行っている途中で、電話に出たり、メールに返信したりすると、途端に集中力が下がるというのは、多くの人が経験しているのではないでしょうか。
そしてこれは、先ほどのバッチングとも重複しますが、タスクをスイッチングしない時間が長ければ長いほど、仕事のクオリティは上がっていきます。
つまり、パフォーマンスを最適化するには、ディープワークしかないということになります。
Put another way, the type of work that optimizes your performance is deep work.
Deep Work, P44
ただし経営者はマルチタスクに徹した方が良い場合も
「シングルタスクが成功の鍵」というと、必ずと言っていいほど挙がるのが、
えいじじゃあ、ジャック・ドーシーはどうなの?
という疑問です。
- ジャック・ドーシー
Jack Dorsey -
- Twitterの共同創業者、元最高経営責任者
- スマホ端末でのクレジットカード決済会社Squareの共同創業者、最高経営責任者
彼は会社を2つ掛け持ち、それぞれの会社の経営者として大きな成功を収めています。
これまで、「ディープワークが成功の鍵」と繰り返してきましたが、この矛盾はどのように説明できるのでしょうか?
それは、彼ほどの超エリートレベルの経営者の場合、ディープワークでのクリエイションは他の才能ある人に任せて、自身はマネージメントに徹した方が生産性が高いからです。
例えば、彼が4時間ディープワークして、何か一つの問題を解決するのは、彼の本来の価値を活かすことにはなりません。
それよりも、その問題解決に特化した優秀なディープワーカーを3人雇って、最終的な決断部分のみを持ってきてくれた方がよっぽど生産的です。
また、ドーシーほどの経営者でなくても、フットワークの軽さやレスポンスの速さを求められるマネージャー的なポジションにいる人などにとっては、必ずしもディープワークやシングルタスクが有効になるとは限りません。
しかしながら、本書で伝えたいことはあくまでも、今の時代いかにディープワークが貴重で人生を変えるほどのパワーを持っているかというところであり、そのエッセンスはどのような職業やポジションの人にとっても参考になるのではないでしょうか。
To ask a CEO to spend four hours thinking deeply about a single problem is a waste of what makes him or her valuable. It’s better to hire three smart subordinates to think deeply about the problem and then bring their solution to the executive for a final decision.
Deep Work, P46
『Deep Work』はAudibleで聴けます
まとめ

スキルを身につけるにはディープワークが必要な理由【まとめ】
- ディープワークで難しいことを素早く習得できる
- 天才の条件はディープワーク能力
- あなたがマスターしようとしていることに、意識が一点集中している
- フィードバック→改善という環境下で、常に生産性を高めることに意識が集中している
- 脳科学的なディープワークの影響
- ミエリンが増えることで、技術が向上していく
- 低集中の状態になると、ミエリンの層が狙ったスキルに関する脳回路にできにくくなる
- 天才の条件はディープワーク能力
- ディープワークでエリートレベルの生産ができる理由
- バッチングで一つの仕事をまとめて行う
- 仕事のクオリティ =(かけた時間)×(集中の強度)
- シングルタスクで一つの仕事に集中する
- タスクをスイッチングしない時間が長いほど、仕事のクオリティは上がる
- ただし経営者はマルチタスクに徹した方が良い場合も
- 職種やポジションによって、ディープワークやシングルタスクの有用性は変わる
- バッチングで一つの仕事をまとめて行う
ディープワークは成功の「条件」ではなく、あくまでもあなたのポテンシャルを最大化するための一つの「手段」です。
また、何かを創造したり、生み出す人にとっては、仕事に対する「基本姿勢」ということもできます。
特に高度なスキルや知識を習得する場合は、短期間での一点突破が鍵になります。
つまり、ディープワークとは、これから何かを成し遂げるための「宣言・象徴」ということができるのではないでしょうか。
次回は、「ディープワークの希少性」というテーマについて、深掘りしたいと思います。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。

『Deep Work』シリーズ記事一覧
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