作業中のBGMは集中力を阻害するのか?
仕事や勉強は音楽を流しながら行うという人は多いかと思います。
理由としては、「何か音があった方が集中できる」、つまり「無音だと集中できない」ということだと思いますが、果たしてそれは本当なのでしょうか?
あなたが今この記事に訪れてくれたのは、きっと、
実は、無音の方が集中できるのでは…
というアイデアが浮かんだからだと察します。
結論から言うと、
無音の方が集中力・生産性が上がります。
では、なぜ無音の方が集中できるのでしょうか?
そこで、今回お話しするテーマがこちら、
- 無音だと集中できないと感じる人の理由
- 無音が一番集中できる理由
- BGMが多少有効なケース
それでは、始めていきましょう。
無音だと集中できないと感じる人の理由
なぜ無音だと集中できないと感じる人がいるのでしょうか?
主な理由は4つ
- モチベーションが低い
- 生産的作業とBGMが習慣によって紐づいている
- 環境音が気になってしまう
- エゴの声がうるさい
詳しく解説していきます。
モチベーションが低い
まず、そもそもの問題として、作業に対するモチベーションが低いということが挙げられます。
理由としては、
- 他のことを考えている
- 白昼夢を見ている状態
- 精神疲労を起こしている
- ドーパミンレベルが低い
といったことが考えられます。
このままでは、作業を行う精神状態が整っていないため、BGMの力を借りて、人工的にやる気を起こさせようとします。
確かに音楽には気分を高揚させる効果があるので、やる気やモチベーションも一定量アップします。
そのため、

BGMがあった方が仕事が捗るな…
という感覚を得るので、相対的に「無音は集中できない」という位置付けになります。
生産的作業とBGMが習慣によって紐づいている
BGMがあった方が仕事が捗るという感覚を覚えた人が、それ以降、その作業をする時は毎回同じ曲を流すようになると、それがやがて習慣化され、その生産的作業とBGMが脳内で紐づきます。
そうすると、その曲をかけただけで「集中モード」に切り替わるように脳がプログラムされ、条件反射的に作業に入り込めるようになります。

環境音が気になってしまう
人によっては、周りが静かすぎると、
- 椅子の軋む音
- 人の話し声
- 車や電車の音
- 呼吸音
といった環境音が気になってしまい、集中できないということがあります。
特に、HSP気質のある人は、無音状態に緊張感を感じる傾向があるので、適度な雑音があった方が仕事が捗る場合があります。
エゴの声がうるさい
普段の生活で、無音になる時間が極端に少ない人は、いざ無音の状況に身を置かれると、それまでノイズでかき消されていた自分の中の思考(エゴ)の声がはっきり聞こえてしまうという場合があります。
BGMがあると、いい塩梅でエゴの声を消してくれるので、感情を揺さぶられることなく、作業に集中できるということがあります。
特に、ADHD気質の人は、この傾向が顕著に現れます。

ディープワークには無音が最適な理由
前述のように、BGMにも限定的なメリットはありますが、やはり、純粋に作業に没頭するという点においては、無音に勝るものはありません。
特に、
- ライティングをはじめとした集中力を要するアウトプット
- 複雑な問題解決
- 新しいことを学ぶ時や難しい教材を扱う時
といった、高い集中力と集中の持続力が要求される、いわゆるディープワークと呼ばれる作業においては、そのパフォーマンスの差が顕著になります。
では、なぜディープワークには無音が最適なのでしょうか?
理由は2つ
- ゾーンに入りやすい
- ワーキングメモリーを消費しない
詳しく解説していきます。
ゾーンに入りやすい
まず、無音の方がゾーンに入りやすいということがあります。
ゾーンに入るには、ある程度の集中の深さが必要になります。
深い集中のレベルに達するには、その集中の対象以外の刺激をできる限り少なくすることが肝要です。
我々の脳は音に反応するようにできているので、BGMを流していると、自分では意識していなくても、脳は常に刺激にさらされていることになり、深い集中状態に入りにくくなります。

ワーキングメモリーを消費しない
ディープワークに没頭するためには、深い集中力に加え、集中の持続力も大事になってきます。
我々の脳には、一度に脳が処理できる量のキャパシティ(ワーキングメモリー)が設定されています。
このワーキングメモリーの消費量は、入力される刺激の大きさに比例します。
今回のBGMの場合だと、ボリュームの大きさというのも、刺激の大小に含まれます。
また、たとえ音量が小さくても、その音楽自体によって感情が揺れ動くことで、それも刺激となり、感情のリソースを消費します。
さらに、我々の脳は、音の種類を判別し、そこから得られる結果と関連付けるという特性があります。
例えば、たとえ音が鳴っていなくても、スマホを目の前に置いておくだけで、脳は通知音が鳴るところを予測する「待機状態」になるため、常にワーキングメモリーが消費されることになります。
また、その状態で「スマホを気にしないようにする」という精神的な努力も、脳への負担になります。
したがって、本当に集中したい場合は、無音状態で作業を行うことはもちろん、音が鳴る可能性があるものを排除するということも重要になります。

ホワイトノイズや音楽が有効なケース
では、BGMは全く効果がないのでしょうか?
作業をする際に、ホワイトノイズや邪魔にならない程度のBGMを流すことが有効なケースもあります。
BGMが有効なケースは3つ
- タスクの導入部分
- 複雑な思考を必要としないタスクを行う時
- 外向的な人
詳しく解説していきます。
タスクの導入部分
先ほど挙げたような、元々のモチベーションが低い人に限らず、何らかのタスクに取り掛かる時というのは、モチベーションが低い状態なのが普通です。
集中力というのは、いきなりMAXになるのではなく、作業に没頭していくうちに徐々に上がっていくものです。
そのため、その取っ掛かりとして、
- テンションが上がる音楽
- 清流や雨音などのホワイトノイズ
といったBGMを流すことは有効です。
しかし、音を流す時間が長すぎると脳がどんどん疲弊していくので、だいたい30〜60分くらいに留めた方がいいでしょう。
また、あまりにも好きすぎる音楽を流してしまうと、作業どころではなくなってしまうので、選曲には注意しましょう。
複雑な思考を必要としないタスクを行う時
ある程度の集中力は必要でも、そこまで複雑な思考を必要としない作業であれば、低く音楽が流れている程度であれば、むしろ捗ることがあります。
例えば、
- 読書
- 絵を描く
- 簡単なコーディング作業
- メールの返信や会議などのリアクティブなタスク
などであれば、ワーキングメモリーをそこまで消耗せずに、バランスよく作業を継続することができます。

外向的な人
あるリサーチによると、内向的な人に比べて、外向的な人の方が大脳皮脂の覚醒度の基準値が低いということが明らかになっています。
つまり、外向的な人は脳を活発にするために刺激が必要ということです。
外向的な人というのは、常に外界の刺激を欲している状態であり、無音を「空虚」と感じてしまう傾向があります。
そのため、あまりにも長い時間刺激のない無音状態に身を置かれると、
- 退屈
- 焦燥感
- 神経衰弱
といった症状が現れ始めます。
逆に、音があることによって、
- 注意力の向上
- 気分の高揚
- 集中の持続
といった効果が見込まれます。
また、外向的な人は、音楽によってエネルギーレベルそのものが上がります。

ほう、これがクラブに行って元気が出る人と疲れる人の違いブヒな
ただし、外向的な人であっても、適切なバランスの刺激の入力が重要です。
究極的には、外向的な人でも無音でのディープワークが勝るはずですが、そこまでいくにはある程度訓練が必要になってきます。
- Investigating the effects of background noise and music on cognitive test performance in introverts and extraverts: A cross-cultural study
- Eysenck’s Theory of Personality and the Role of Background Music in Cognitive Task Performance: A Mini-Review of Conflicting Findings and a New Perspective
- Music is as distracting as noise: the differential distraction of background music and noise on the cognitive test performance of introverts and extraverts

おわりに

私の両親や祖父母の家では常にテレビがついていて、常に音が鳴っているのが当たり前という環境で育ったため、大人になってもその習慣が抜けず、「帰宅したらとりあえずテレビをつける」ということを無意識で行なっていました。
そして、無音という状況に退屈や圧迫感のようなものを感じていました。
しかし、一人暮らしをするようになり、徐々にその感覚に変化が現れ、しだいにテレビやラジオの音がうるさく感じるようになりました。
そして、最終的にはテレビを処分するまでになり、現在では無音の素晴らしさを実感しています。
無音は決して空虚などではなく、とても豊かで贅沢な空間だということに気がつきました。
おそらく、同時期に瞑想を始めたことも理由の一つだと思いますが、思考がとてもクリアになり、メンタルのバランスが整いやすくなったと感じています。
ただし、ここでの無音とは、「音を完全に遮断した密閉空間」ということではなく、あくまでも、「生活音のみで過ごす」という意味での無音です。

人間は完全な無音状態だと精神を病むらしいからね…
特に、現代では、音だけに限らず、映像や情報など、様々な刺激にさらされ続けているので、意識的に刺激のレベルを下げる時間を作ってあげると、パフォーマンスアップを実感できるでしょう。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。
