『Deep Work（ディープワーク）』完全要約｜大事なことに集中する方法

マルチタスク全盛の今、なぜ「一点集中」が大事なのか？

今回紹介する本はこちら、

Deep Work
Rules for Focused Success in a Distracted World

インターネットやスマホが当たり前になった現代のビジネスの世界において、複数のことを同時進行する「マルチタスク」をいかにスマートにこなすかが、その人の生産能力の指標になっている傾向があります。

しかし、本書では、新時代の経済において、真の勝者になるには、一番大事なことに一点集中する「ディープワーク」が必要だと述べています。

そこで、今回は、

について、詳しく解説していきます。

それでは、始めていきましょう。

ディープワークとは

この章では、「Deep Workとは何か？」を次の2つの観点から説明しています。

それぞれ解説していきます。

「Deep Work」と「Shallow Work」の違い

ディープワークに取り組む前に、まずは「Deep Work」と「Shallow Work」を明確に切り分ける必要があります。

現代は、メールやSNSなどの膨大なShallow Workに追われ、Deep Workを行うことが困難になっています。

さらに、一度Shallow Work過多の状態に慣れてしまうと、Deep Workで集中することが難しくなることも原因です。

ディープワークが現代で必要な2つの理由

現代のナレッジワーカー（知的労働者）にとって、Deep Workが欠かせない理由は2つあります。

知的労働者にDeep Workが必要な理由は2つ

• 情報システムの複雑化による学習の高度化
• デジタルネットワーク革命による市場拡大

現代の私たちは、非常に高度で変化の激しい情報経済の中で生きており、特にナレッジワーカーの人がその世界で価値を提供し続けるためには、複雑な技術を素早く習得する能力を磨く必要があります。

また、インターネットの普及によって、距離や地域の制限なしに顧客にリーチすることが可能になると同時に、顧客の目も肥えていきました。

そのため、平凡なレベルでは相手にされず、あなたが作り得る最高のものを提供する必要があります。

しかし、現代では、ディープワークの希少性と価値のギャップがどんどん広がっており、そこに大きなチャンスが潜んでいます。

本書では、「ディープワーク仮説」として、次のように言及しています。

ディープワーク仮説：Deep Workを行う能力（を持った人）はどんどん希少になっているのと同時に、現在の経済活動におけるその価値はますます上がっている。結果として、このスキルを養って仕事の中心に据える、わずかな人たちだけが成功するようになる。

ディープワークの価値

この章では、現代における「ディープワークの価値」について、次の3つの観点から説明しています。

それぞれ解説していきます。

AI時代に価値が上がる人材

これから、AIがますます進化していくにあたり、我々にはさらなるハイパフォーマンスが求められます。

その中でも、特に価値が上がるとされる人のタイプは3つあります。

AI時代に価値が上がる3つのタイプ

• ハイレベルな技術者
• スーパースター
• オーナー

ハイレベルな技術者

これからの時代、高い技術を必要としない仕事は、AIやロボットによって自動化されるため、今後はデジタルのデータを抽象的な領域で扱うようなハイレベルな技術職の市場価値が高騰します。

つまり、猛スピードで進歩する機械の知能をうまく扱える技術者のみが生き残るということになります。

スーパースター

ここでのスーパースターとは、抜きん出た才能の持ち主を意味しています。

インターネットが普及した現代では、物理的な距離の制約がなくなり、リモートワークが可能な職種であれば、「才能」は世界中から買うことができるようになりました。

しかし、才能は大量に買ったり、足し算したりすることができないため、どうしても一部のハイパフォーマーたちに仕事が集まります。

オーナー

ここでのオーナーとは、新しい技術やサービスを所有する人のことです。

テクノロジーの進歩によって、人件費は大幅に削減されている一方、革新的な技術やサービスの経済的なポテンシャルは上がり続けているので、それらを所有してる人たちのリターンは莫大なものになります。

そのため、スタートアップでも価値が高騰する可能性があり、投資家の人たちにとっても、ローリスク・ハイリターンな投資先が増えます。

つまり、革新的なものを作れば、誰でもゲームチェンジすることが可能な時代に突入しているということです。

これからの時代に求められる能力

本書では、これからの時代に必要な2つの能力について、次のように言及しています。

これからの経済で鍵となる2つの能力

• 難しいことを素早く習得する能力
• クオリティとスピードを兼ね備えたエリートレベルの生産能力

難しいことを素早く習得する能力

現在、世の中のテクノロジーをめぐる流れは大きく二つに分かれています。

1. SNSやiPhoneなどの消費者目線のテクノロジー
2. AIや高知能ロボットといった複雑なメカニズムを持つテクノロジー

スマホの登場により、人々の興味やリソースの大半は、この低負荷で高刺激なデジタル沼に流れ出ています。

しかし、実際に世の中を動かすのは、高い習熟度、継続的な学習、習得するまでのスピードが要求されるAIや高知能ロボットといった複雑なメカニズムを持つテクノロジーを扱う人たちです。

そのためには、ディープワークで難しいことを素早く習得する能力を養う必要があります。

クオリティとスピードを兼ね備えたエリートレベルの生産能力

スーパースターになるためには、難しいことを素早くマスターする能力だけでなく、その能力をしっかりと結果に落とし込んで、人々に価値を提供する能力が必要になります。

つまり、ただの技術オタクやテクニシャンではなく、ハイレベルなものを実用レベルのクオリティとスピードでアウトプットしなければなりません。

スキル習得にはディープワークが必須

これからの時代に成功するためには、高いレベルでのスキル習得能力が求められ、その成果はどれだけディープワークできるかで決まります。

つまり、ディープワークする能力＝ポテンシャルの限界値と言うことができます。

では、具体的にディープワークで得られる2つの能力について解説します。

ディープワークで得られる2つの能力

• 難しいことを素早く習得する能力
• エリートレベルの生産能力

難しいことを素早く習得する能力

スーパースターと凡人を分けるのは、この道で生きていくと決めたことに対して、己の持てる力をフルコミットする才能があるかどうかです。

そして、そのために必要な要素が2つあります。

1. あなたがマスターしようとしていることに、意識が一点集中している
2. フィードバック→改善という環境下で、常に生産性を高めることに意識が集中している

また、脳科学的にも、ディープワークの重要性が証明されています。

「ミエリン（myelin）」という脳内物質が増えことで技術が向上していくのですが、この時重要なのは、一つのことに集中し繰り返し練習して、特定の脳回路のみを使用することです。

したがって、何かに本気で取り組みたいときは、形になるまではとにかく一点集中が鍵となります。

エリートレベルの生産能力

圧倒的な生産性を実現するためのキーワードが2つあります。

1. バッチング
2. シングルタスク

バッチングとは、

• 難しくて重要な知的労働を
• 邪魔の入らない環境で
• まとまった時間行うこと

です。

仕事の生産性は、「仕事のクオリティ ＝（かけた時間）×（集中の強度）」できまるので、一日の中でタスクを分割するよりも、一定期間集中して一つのタスクを行った方が生産性が上がります。

次にシングルタスクですが、マルチタスクの逆で、一度の一つのことしかしないということです。

マルチタスクの方が効率が良いかと思うかもしれませんが、実は同じボリュームの仕事をこなした場合、最終的に生産性が高いのはシングルタスクです。

タスクのスイッチングは集中力を著しく低下させますが、タスクをスイッチングしない時間が長ければ長いほど、仕事のクオリティは上がっていきます。

ディープワークの希少性

現代でディープワークが貴重になっている理由は次の3つです。

本書では、この理由を紐解くために、4つの観点から説明しています。

メトリック・ブラックホール

メトリック・ブラックホールとは、評価基準が曖昧である状態を表しています。

まだ経済が製造業中心だった時代は、「どのくらいの期間にどれくらいの製品を生産したか」という絶対的な評価基準でしたが、仕事のプロセスが複雑化した現代のビジネスでは、何を持って評価するのかが難しくなっています。

例えば、頻繁なメールのやり取りは、現代のビジネスにおいて欠かせないものですが、その業務が生産性にどれだけの影響を与えているかを正確に推し量るのは困難です。

そのため、ディープワークに対する意識が薄れ、本当の意味での生産性を追求しにくくなっている社会構造が、ディープワークの希少価値を高める結果となっています。

最小抵抗の法則

人は本能的に、目の前にあるタスクの中から最も負荷の低いものから手をつける習性があります。

さらに、現代のクイックレスポンス至上主義が、Shallow Workの優先を正当化させる後押しとなっています。

一方で、ディープワークは脳に負荷を与える行為なので、目の前に簡単なタスクがある現代では、なかなか手がつかず、その希少性は高まっています。

忙しさは生産性から逃げる口実

製造業時代では、「生産性」が可視化されやすかったので、やるべきことに集中し、余計なことはする必要がありませんでした。

しかし、現代のナレッジワーカーたちは、自身の生産性を数字で示すことが難しく、その代償として、「どれだけ忙しく働いたか」という眼に見える指標をアピールするようになりました。

実際は、本当に生産性が高い人は忙しそうに見えません。

逆も然りで、あからさまに忙しそうに見えている人の生産性は高くないということが言えます。

インターネット・カルト

今の社会では、

• より速く
• より広く
• より新しい

ものが良いとされ、多くの人は「そのスピードについていけない者は生き残れない」という危機感を感じ、SNSでの投稿や、最新のニュースをいち早く知ることに躍起になっています。

しかし、本来の生産性を取り戻すディープワークは、

• クラフトマンシップ
• 習熟
• オールドファッション
• ローテク

という価値観のもとに存在し、今のトレンドを完全に逆行しています。

したがって、現代で本当の成功を手にするには、新しいテクノロジーを捨てる覚悟が必要になります。

ディープワークの意義

この章では、現代における「ディープワークの意義」について、次の3つの観点から説明しています。

それぞれ解説していきます。

脳科学的な深さとは

あなたの人生のクオリティは、

• あなたが集中すると決めたこと
• あなたが無視すると決めたこと

の2つの要素、つまりあなたの意識を向け先で決まります。

この事実は脳科学的にも証明されており、ポジティブ思考とネガティブ思考の人では扁桃体の反応が違い、幸福度にも有意な関連性が見られました。

しかし、人間の脳はネガティブなものに意識が向くようにできているため、意図的に意識の向け先を変える訓練をする必要があります。

Deep Workで本当に大事なことに深く集中することで、その他の心配事や不安を考える隙間をなくすことができます。

このように、脳科学的な観点から見ても「深い集中」の重要性が見て取れます。

心理学的な深さとは

人間にとって最高の心理状態は、リラックスしている時ではなく、「できるかできないかギリギリの難易度のやりがいのあることに対して、己の心と体のポテンシャルをフルに使っている時」に訪れます。

いわゆる「フロー状態」です。

実は仕事の方が自由時間よりも満喫するのが簡単です。

なぜなら、仕事（＝ディープワーク）には、

• ゴール設定
• フィードバック環境
• チャレンジ

といった、フロー状態に入るために欠かせない要素がセットになっているからです。

そして、人はフロー状態に入ると幸福感を感じます。

このことから、心理学的な観点からも、ディープワークの重要性が窺えます。

哲学的な深さとは

私たちの人生を突き動かしている根本的な原動力は、「神聖さ」と「生きる意味」です。

そして、「仕事」における神聖さと生きる意味は、プロフェッショナリズムの中で育んだクラフトマンシップです。

それは常に自分の内側に存在し、仕事を通して深く自分と向き合うことでしか、本当の喜びや生きがいを感じることはできません。

職人の仕事とは、そこから意味を作り出すのではなく、すでにそこにある意味を見出す技術を育むことである。

この精神は、昔ながらの技術職だけのものではなく、現代の知的職業の中にもクラフトマンシップを見出すことができます。

つまり、ディープワークで己の技術を磨くことで生きる意味を見出し、ひいては人間の根源的な喜びの創造に繋がるということです。

ディープワーク実践のヒント

本書の後半部分では、「実践のルール」として、様々な実例とともに、ディープワークに取り組む際のヒントが紹介されているので、一部抜粋して紹介したいと思います。

• 外部との連絡を遮断する
  • メールや電話は控える
• 1日を2パートに分ける
  • 例：前半部分はディープワーク、後半はそれ以外の仕事
• ディープワークを習慣にする
  • 毎日同じ時間に行う（ルーティン化する）
• フィードバック環境を作る
  • 仕事の成果の共有や問題解決を誰かと行う機会を設ける
• ぼーっとする時間を作る
  • 脳はぼーっとしている時に情報を整理している
• 夕方以降は働かない
  • 寝る前は特にリラックすることが大事
• 退屈を受け入れる
  • ディープワークは遅延報酬のため、行動自体に喜びを見出しにくい
• 締切をうまく活用する
  • 人は期限ギリギリまでやる気が起こらない
• アクティブメディテーションを行う
  • 散歩、ジョギング、ドライブ、シャワーなど体のみを使うアクティビティ
• SNSをやめる
  • やめられない場合は使う時間帯を決める
• インターネットをエンターテイメント目的で使用しない
  • 必要な情報を得るリソースとしてのみ活用する
• 1日のスケジュールを分単位で組み立てる
  • Shallow Workを可視化することが目的

まとめ

正直、ほとんどの人にはディープワークは必要がないと思っています。

一般的な会社に勤め、日々を不自由なく暮らせるだけの給料をもらっていて「それなりに満足している」「プライベートが充実している」という人であれば、何も修行のようなディープワークをしなくても十分幸せに暮らせます。

しかし、もしあなたが、その大多数の人の群れから抜け出し、「上位数%の領域で勝負したい」または「どん底から抜け出したい」という強い思いがあるのであれば、ディープワークは必須になります。

また、ディープワークは筋トレと似ていて、それを行うこと自体が自信につながり、人生のあらゆる場面で好影響を及ぼします。

という人は、3ヶ月でもいいので、ぜひ何かにがむしゃらに取り組むという経験をしてみてください。

きっと、景色が変わります。

それではまた、次の記事でお会いしましょう。