アカウンタビリティ・パートナー｜『Atomic Habits』徹底解説

なぜ習慣は公言すると続くのか？

の記事では、ハビットトラッカーで習慣を記録することによって、習慣が続きやすくなるというお話をしました。

このテクニックは、自分がやらなかったことに対する不快感を利用して、サボるのを防ぐ方法ですが、あくまでも自分の中での決まり事なので、そこまでの強制力はなく、

という人も少なくないかと思います。

そんな人には、これから始める習慣を公に宣言して、強制的にサボりづらくする状況を作り出す「アカウンタビリティ・パートナー」というテクニックがおすすめです。

そこで、今回は、

というテーマについて、詳しく解説していきたいと思います。

それでは、始めていきましょう。

アカウンタビリティ・パートナーとは

痛みは喜びよりも強力

の記事では、即時報酬擬似的に作り出すことによって、習慣を継続することができると説明しました。

しかし、習慣を行わなかったことに対する苦痛を避けようとすることでも習慣を継続することができます。

実は、成功で得られる報酬よりも、失敗によって与えられる罰則の方が強力です。

人間の反応はとてもシンプルで、罰則が重ければ、必死にそれを避けようとし、何も痛みを伴わないものであれば、無視されます。

例えば、昭和の日本では、飲酒運転に対する罰則がそこまで厳しくなく、当たり前のように居酒屋に車で行くような時代で、人々の飲酒運転に対する意識は非常に低い状態でした。

しかし、飲酒運転が原因の深刻な事故が後を経たないため、徐々に厳罰化されていき、今の時代では、飲酒運転は絶対にやってはいけないという認識に変わっています。

このように、民衆の習慣を大きく変える時は、罰則を強化することが最も効果的です。

そして、罰則を与えられるタイミングは、早ければ早いほど効果があります。

つまり、これは即時報酬の逆バージョンです。

その習慣をやらないことよりも、やることの方が楽に感じる「即時罰則」の状況を作り出します。

The more immediate the pain, the less likely the behavior. If you want to prevent bad habits and eliminate unhealthy behaviors, then adding an instant cost to the action is a great way to reduce their odds.

Atomic Habits, P206

習慣の継続を他人に約束する「ハビットコントラクト」

この習性を利用するために、失敗したら自らに罰則を課さなければいけない環境を意図的に作るのですが、自分だけの取り決めだと無かったことにしてしまうので、第三者に宣言して避けられない状況にします。

この、自分がやると決めたルールを宣言する相手のことを、アカウンタビリティ・パートナー（Accountability partner）といいます。

アカウンタビリティ・パートナーに、自分が定めた習慣の目標と、それが守られなかった時のペナルティを伝えます。

こうすることによって、自分との約束でしかなかったものが、他人との約束に変わります。

この他人との約束や取り決めのことを「ハビットコントラクト（Habit Contract）」と言います。

すなわち、このルールを守らないということは、その誰かとの約束を破るということになります。

ハビットコントラクトは口約束だけでも構いませんが、契約書のような形で、書面やテキストに記載し、認印やサインまで残しておくと、より効果を発揮します。

もちろん、この契約書に法的な拘束力はありません。

しかし、口約束だけではなく、ちゃんと契約書として残すという行為自体が、心理的な拘束力を生み出します。

A habit contract is a verbal or written agreement in which you state your commitment to a particular habit and the punishment that will occur if you don’t follow through. Then you find one or two people to act as your accountability partners and sign off on the contract with you.

Atomic Habits, P208

大事な人からの信頼を失うことが一番のペナルティ

我々の脳は、他人からの信頼を失うことに恐怖を感じるようにできているので、どんなにやる気がなくても、

と感じ、いやいやでもその行動を実行するようになります。

逆に、宣言通り習慣を続けることができれば、その人たちからの評価が上がるので、モチベーションが上がります。

そのため、このアカウンタビリティ・パートナーは、恋人や友人など、自分との距離が近い人・重要度が高い人の方が効果があります。

また、そのような近しい人が周りにいないという人は、SNS上で宣言するのも悪くありません。

リアルよりもバーチャルの世界での方が臨場感を感じることができる人は、そちらの方が効果があるでしょう。

We care about the opinions of those around us because it helps if others like us. This is precisely why getting an accountability partner or signing a habit contract can work so well.

Atomic Habits, P210

まとめ

アカウンタビリティ・パートナー【まとめ】

の記事でもお話ししていますが、人間は狩猟採集時代から群れで暮らして生き延びてきた歴史がDNAの中に深く刻まれており、群れのメンバーから嫌われたり、追い出されたりすることに対して、かなりシビアに反応するようにできています。

そのため、「約束を守る」という行為は、この抗い難い人間の本能の上に成り立っています。

決して、人間の崇高な美徳から約束を守っているのではなく、この心理的なペナルティを恐れて、仕方がなく約束を守っています。

もちろん、それが、「私は約束をを破るような人間ではない」というアイデンティティになっている人もいます。

しかし、根底には「他人に悪く思われるような人間ではありたくない」という欲求があります。

要するに、他者との約束はそれほどに強力だということです。

プレッシャーになりすぎるのも良くありませんが、習慣化の成功には、程よい緊張感が欠かせません。

アカウンタビリティ・パートナーで、うまく他の人を巻き込んで、さらなる高みを目指しましょう。

次回は、「良い習慣は才能を超えるのか？」というテーマについて、深掘りしていきます。

それではまた、次の記事でお会いしましょう。